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名護博物館ブログ

小学校・市内の川の野外学習へ(淡水編)


東江小への出前授業で、幸地川の野外学習が始まりました。
4年生の総合学習です。

幸地川は、博物館と東江小(博物館の隣)から歩いて数分で行ける川で、名護岳に源流があります。
街中を流れる小川ですが、水は比較的きれいで多くの生きものがすんでいます。

今回の観察場所は、潮の影響のない淡水域。

この場所は、地域の方が定期的に草刈などをしていますが、学習で使うために水際の草を残してもらっています。
この水際の草陰が、魚やエビ、水生昆虫などの川の生物にとって大事な生活空間だからです。この草陰がないと、観察できる生物数はぐんと少なくなってしまいます。

今回の学習では、手網を使って子どもたちに生きものを採集してもらい、およそ25種が確認できました。
その一部を少し紹介します。


ヒメヌマエビのメス

淡水域の水際の草陰で観察できる生物の代表は、ヌマエビのなかまです。
ほかにもミゾレヌマエビやツノナガヌマエビ、トゲナシヌマエビなどがよく見られます。


ミゾレヌマエビのメス(下見のときに水中で撮影)

おなかに卵を持ったエビもたくさん見られました。




ミナミテナガエビのオス(下見のときに水中で撮影)

沖縄名はタナガー。
写真は、ハサミまで入れると15cmほどのオス(ハサミが長いのはオス)。
今回捕まえることはできませんでしたが、草陰にはこのような大物タナガーも潜んでいます。




アカナガイトトンボの幼生

こちらも流れのある小川の草陰でよく取れる代表種。
今回もたくさん観察できました。




ユゴイの幼魚

これは3cmもない幼魚ですが、大きくなると20cmをこえる肉食魚です。
よく似た種にオオクチユゴイがいて、ユゴイとともに沖縄の淡水域を代表する遊泳魚です。
この場所では、ユゴイ類2種の幼魚がたくさん群れて泳いでいるところを川の上からも観察できます。

でも、素早く泳ぎ回るので、手網で捕まえるのはなかなかムズカシイ!
たまたま、草陰にいた幼魚が網に入ったようですね。




テンジクカワアナゴ

アナゴとありますが、ハゼのなかま。
障害物の陰によく潜んでいます。
草陰でもたまに取れます。



草陰以外では、流れの速い瀬の石の下などでもよく生きものが見つかります。


ヨシノボリのなかまの幼魚

2cmほどのかわいい幼魚が早瀬でたくさん取れました。
シマヨシノボリだと思いますが・・・イマイチ自信がありません。


シマヨシノボリのオス(下見のときに水中で撮影)

成魚はこんな感じのハゼのなかまです。




ヒラテテナガエビのオス

今回捕れた生きものの中では最大!
ハサミの長いオスです。
ヒラテテナガエビは、早瀬で見られる代表的なエビです。


ヒラテテナガエビのメス

こちらはメス。おなかに卵がたくさん。
テナガエビやヌマエビのメスは、おなかに卵を抱くため、その部分が幅広くなっています。
このため、オスに比べると全体的に丸っこく見える印象です。




モクズガニ

沖縄名はキーガイ(毛ガニの意味)、ウリガイ(川を下るカニの意味)など。
名前のとおり、ハサミに毛が生えています。
また、秋〜冬にかけて産卵のために河口近くまで川を下ります。

淡水域を代表するカニで食用にもなります。
写真のカニは、甲幅が3cmほどで今回一番の大物ですが、10cm近くまで大きくなるカニなので、その意味ではまだまだ小物。
どれくらい大きくなるかは、こちらの記事をご参考に。




オオヒライソガニ

もう1種、淡水域でよく見かけるのがこのカニです。
モクズガニのようにハサミに毛はなく、甲の形も四角に近いです。



さて、観察が終わった後は、採集した生きものは川に返しました。
生きもの採集は楽しいですが、みんなが欲張って生きものを取り出したら、小さな川ではひとたまりもありません。自然観察は、多くの人が楽しめるように、他の人のことも考えて行うのが大事です。
もちろん、ゴミのポイ捨てなどはもってのほかですね。

今回は淡水域の観察でしたが、次の学習は、河口近くの潮の影響のある感潮域(かんちょういき)へ行く予定です。環境もだいぶ違うので、また違った生きものを観察することができるでしょう!

(NM)

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