昨日の朝の清掃のとき、博物館中庭と建物の間を歩いていたカニを職員のMOさんがつかまえて教えてくれました。
一瞬、水槽のカニが逃げたか!?・・・と考えましたが、そのようなカニは飼育していませんでした。
博物館内に姿を現したベンケイガニのなかま(水槽に入れました)
実は、雨が降った後などに、どこからともなく博物館周辺にカニが現れたことは過去にも何度かあります。
以前は、モクズガニが夜に中庭を歩いていたこともありました。
彼らはどこからやってくるのでしょう?
名護博物館のすぐ裏には、いつもは完全に枯れているコンクリート水路があるのですが、大雨の時やその直後だけ水が流れます。
この水路は博物館前の道路の下を横切っていますが、暗渠(あんきょ)になっているため、上からは見えません。
1週間ほど前、水が流れているときに暗渠の中を確認したところ、道路の下に魚もいることがわかりました。
その魚は、カワアナゴのなかま(チチブモドキと思われる)でした。
増水して上流から流されてきたのかというと・・・そうではなさそうです。
チチブモドキは上流で見られる魚ではありません。
博物館前の道路を横切ってすぐの路地裏。この下も奥にむかって水路が伸びています。
さらに、水路をたどっていくと、幸地川の河口近くにたどりつきます。
まん中やや左にポッカリ口を開けている排水口がありますが、これが博物館の裏に続いているのです。
この写真はだいぶ前に撮影したもので、川の水面から排水口まで少し高さがありますが、先日水路に魚が見られたときは、排水口が水没していました。
そんなわけで、水路に現れた魚は、大雨などで水かさが増したときに川から水路に入って博物館裏まで上ってきたと考えられます。
博物館に時々姿を現すカニも、同じようにして幸地川からやってきたのでしょう。
河口近くから博物館裏まで、水路の長さは約350mでした。
旧幸地川水路(暗渠)をGoogleマップで見る
今ではコンクリートで固められ、ほとんどが暗渠になってしまっていますが、この水路はかつての幸地川そのものといってもよいかもしれません。
河口近くで分かれるこの水路と幸地川の本流に挟まれる場所は、かつては田んぼが広がっていて「アガリブックヮ」と呼ばれていました。
戦前の幸地川と周辺の地図
(名護市史編さん室編, 2003. 名護市史・本編9 民俗Ⅲ 民俗地図. より)
(写真をクリックして「オリジナルサイズを表示」で大きな画像が見られます)
今の名護博物館は、旧名護市役所(名護町役場)を改築したものですが、その裏に幸地川の水路が走っているのが地図上でも確認できます。
水路を挟んで博物館の向かい側、東江(あがりえ)小学校がある場所も田んぼだったようです。
目を閉じると、田んぼが広がる風景が見える・・・気がします。
おそらく、田んぼに囲まれた昔の水路には、今では絶滅してしまったミナミメダカなどがたくさんいたと思われます。
記録がないのでわかりませんが・・・
ぜひ、見てみたかったですね。
さて、話が長くなってしまいましたが、最初に紹介した博物館に登場したカニ、
ベンケイガニのなかまなのですが、少しめずらしい種のような気がしています。
時間があるときに、じっくり調べたいと思います。
* 2020/1/31 追記:どうやらベンケイガニ(めずらしくない)の幼ガニのようです。残念!
最後に、コンクリート三面張りの水路や暗渠は、大雨時には水かさと勢いが増して濁流となり大変危険です。
今回、私が確認したのは、雨が数日続いた後の天気の良い日で、水が引いたときですが、それでも注意が必要です。
水路には気軽に入らないようにお願いします。
もし、この記事を読んで水路に入って事故が起こったとしても、当館は一切の責任を負いかねます。
(NM)