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名護博物館ブログ

名護市内でリュウキュウアカガエルが産卵シーズン!

12月に入って約1週間、先月に比べて急に冷え込んだ気がします。
やんばるの森では、そろそろ渓流性のカエルたちが産卵シーズンを迎える季節です。

今年の2月に名護市内のリュウキュウアカガエルのことを記事で紹介しましたが(こちら)、あれからほぼ1年・・・まさに光陰矢の如しです。
市内のリュウキュウアカガエルの繁殖状況を確認するため、この1週間、夜に何度か川を訪れて様子を見てきたので紹介したいと思います。

まずは、気温が急に下がった12月1日の夜に市内の繁殖場所に足を運んでみたのですが・・・
すでに産卵されているばかりか、ふ化した幼生(オタマジャクシ)もたくさんいました・・・!


リュウキュウアカガエルの幼生(2017年12月1日21時半頃 名護市内)
幼生の大きさからして、ふ化して数日は経っていそうです。
産卵シーンが見たかったのに、「しまった!遅かったか〜!」という感じです。


リュウキュウアカガエルの幼生(2017年12月1日22時頃 名護市内)
こっちはもう少し小さくて、ふ化してそれほど経っていなさそうです。


リュウキュウアカガエルの卵(2017年12月1日21時半頃 名護市内)
卵もありましたが、産卵後数日は経っている発生の進んだものしか見当たらず・・・
ちなみに白い卵は死んでいるものです。

リュウキュウアカガエルは、11月下旬〜3月頃に、渓流の流れの緩やかな浅い場所で一斉に集まって産卵します。

この場所は源流域で岩盤の上を水がちょろちょろ流れ、ところどころ水たまりのようになっている場所です。
水たまりの周辺の水際では、オスが集まっていたものの、メスを呼ぶ鳴き声は全く聞こえません。


リュウキュウアカガエルのオス(2017年12月1日21時半頃 名護市内)

また産卵時には、オスとメスがペアになっている包接個体が見られるのですが、それも見当たりません。

ただ、数は少ないものの、メスと思われる体の大きいカエルは見られました。


リュウキュウアカガエルのメス(2017年12月1日21時半頃 名護市内)
体長5cmほどの立派な個体です。

リュウキュウアカガエルの産卵のピークはわずか数日という短い間に終わってしまい、産卵の瞬間を見ることはなかなか難しいと言われています。
ましてや、名護市は以前紹介したようにリュウキュウアカガエルの分布南限であり、決してその数は多くありません。

国頭村では、産卵場所に数百〜数千という単位で集まってきますが、この場所では、1か所(水たまりの周囲)に5〜10匹、調査した約50 mの範囲でも50匹いるかいないかといったところでしょうか・・・

・・・しかし!

そう簡単には諦められません。
これを逃すと、また来年になってしまいます。

ということで、2〜3日に1回のペースでその後も通い続けることに。
リュウキュウアカガエルは、寒い日が続いた後、気温が少し上がったときに産卵する、という話を聞いていたので、そのような夜を狙って足を運びました。
幸い、名護市内なので、遠い国頭村に行くよりは時間的に行きやすいです。


リュウキュウアカガエルの卵(2017年12月4日0時半頃 名護市内)

12月3日(から4日)には、2日前になかった産卵してまもない卵塊が・・・!
足を運ばなかった12月2日に産卵したというのかね・・・!?

リュウキュウアカガエルの卵は粘着質で、しばらくすると泥などがくっつきます。
ぱっと見た感じ、卵なのか何なのかわかりにくいかもしれませんね。


リュウキュウアカガエルの卵(2017年12月4日0時半頃 名護市内)
拡大するとこんな感じです。
透明なゼリーに包まれた卵の形がわかるでしょうか。


リュウキュウアカガエルのオス(2017年12月4日0時半頃 名護市内)
12月3日の夜は、一応オスは鳴いていたものの、消え入りそうなかすれ声で「・・・ピョ・・・ピピ・・・」といった感じで明らかにやる気がなさそうです・・・

リュウキュウアカガエルの鳴き声は小鳥のさえずりのようなかわいらしい感じではあるのですが、それにしても声が小さすぎて目の前で鳴いていてもかなり集中しないと聴き取れないほどです。
・・・さすがに「もうちょっと元気出して!」と言いたくなりました(笑)
この日は4時間粘りましたが、結局何もおこらず・・・

そんな感じで、「あぁ〜今年はもうダメかな〜」と思いつつも迎えた12月7日の夜のこと・・・
現場についてみると、オスが盛んに鳴いているではないですか!
また、2ペアだけですが、包接個体も見られました!


リュウキュウアカガエルの包接個体
(2017年12月7日20時過ぎ 名護市内)
下の大きいのがメス、上がオスです。
偶然通りかかったコセアカアメンボのペアが左に写りこんで、しかも何か他の昆虫を捕まえていますがそれはさておき・・・

これは期待できそうじゃないですか!

包接個体がいる水たまりの前にしゃがみこみ、気配とライトを消して待つことにします。

しばらくすると、暗闇の中から色々な音が・・・
周辺の落ち葉をかきわける「カサ、カサ・・・」という音に続いて「ポチャン・・!」と水たまりに何か飛びこむ音。
・・・どうやら、水たまりに近づいたときに一度逃げたオスがもどってきたようです。

周辺の暗闇の中に光る緑色の光。
・・・どうやら、ホタルの幼虫が落ち葉の下で光っているようです。

頭上の森から、突如「フォッ、フォッ、フォッ・・・」という大きな声。
・・・どうやら、リュウキュウオオコノハズクが鳴いているようです。
正体を知らなかったら、気味の悪い声に怖くなってしまうかもしれません。
・・・・・・
「ガサガサ・・・!」近くで今度は大きな音。明らかにリュウキュウアカガエルより大きい!
思わずライトを付けてしまいましたが、ネズミでした。
跳びはねるように逃げていったので、カエル脳になっている自分には一瞬大型の渓流カエルに見えました(笑)。
多分クマネズミだと思います。

さて、再びライトを消して待つこと数十分・・・
設置したビデオカメラの赤外線モニターで時々確認しますが、目の前で産卵が始まる気配はありません。

気分を変えて、他の包接個体のいる水たまりに移動。
こっちには、産みたてと思われる卵がありました!

同じようにしゃがみこんでしばらく待っていると・・・
産卵が始まりました!
いや、始まったというよりは、再開したという感じでしょうか。


産卵中のリュウキュウアカガエル(2017年12月7日22時頃 名護市内)

足が痺れて感覚がなくなっていますが、動いて音を出すわけにはいきません
それよりも撮影に集中です!

メスは、オスをのせたまま体をくねらせて絞りだすように一回に3〜5個ほどの卵を産み、水たまりの中を移動してまた産み・・・を繰り返していました。
ときおり水際の岩にしがみついて休んでいましたが、しばらくするとまた同じことを繰り返し・・・という感じです。


産卵中のリュウキュウアカガエル(2017年12月7日23時前 名護市内)
おしりから卵が出ているのがわかるでしょうか?
動画からのキャプチャー画像なのでやや粗いですが・・・

リュウキュウアカガエルは、500個ほどの卵を産むらしいので、単純計算だとこれを100回繰り返すということに!
ハードな作業です。


産卵直後のリュウキュウアカガエルの卵(2017年12月7日23時前 名護市内)
ゼリー状の部分にまだ泥がついていません。
右側の少し泥のついた卵と比べるとわかりやすいです。

観察を始めて一時間強。
一通り産卵を終えたのか、包接個体は水たまりから去っていきました。
・・・お疲れ様です!



7日の夜、川にいたのは3時間ほどですが、ほとんど移動せずにしゃがみこんでいる時間が長かったです(笑)
撮影は一通りできたものの、まだ納得のいく絵は撮れていません。
次のチャンスに期待です!

ところで、名護市で産卵を撮影した次の日の12月8日夜、国頭村の渓流の繁殖場所に行ってきたのですが、まだリュウキュウアカガエルの姿はほとんどなく産卵も始まっていませんでした。
地域によって大分差があるんですね。

そういえば、名護ではヒメハブの姿も全く見かけていません。
国頭村では、リュウキュウアカガエルの産卵シーズンになると、カエルを狙ってヒメハブもたくさん集まってくるのですが・・・
カエルだけでなく、ヘビの数も少ないことを改めて実感しました。

・・・・・・・・・・・・・・・・おまけ・・・・・・・・・・・・・・・・

水たまりの周辺には、イタジイ(オキナワジイ)のドングリがたくさん落ちていました。
いろんな人から、今年のやんばるの森ではイタジイとマテバシイのドングリが豊作という話を聞いています。


水中にたくさん落ちていたイタジイのドングリ(2017年12月1日21時半頃 名護市内)


オキナワウラジロガシのドングリは、1個だけ落ちていました。
イタジイが豊作の一方、オキナワウラジロガシはイマイチのようです。


オキナワウラジロガシのドングリ(2017年12月7日採集)

沢沿いでは、アリモリソウがたくさん花を咲かせていました。


アリモリソウ(2017年12月1日21時半頃 名護市内)


ヤマトクロスジヘビトンボの幼虫(2017年12月7日22時頃 名護市内)
源流の顔なじみ。
この奇妙な形を見ると、なぜかテンションが上がります。


リュウキュウルリモントンボの幼虫(2017年12月1日21時半頃 名護市内)
こちらも顔なじみ。


オキナワマツモムシ(2017年12月1日21時半頃 名護市内)
大きめのマツモムシ。逆さまに泳ぐ姿は見ていて面白いです。


オキナワナガイボグモ(2017年12月1日21時過ぎ 名護市内)
4月の記事(こちら)でも紹介しましたが、同じフカノキの幹に2〜6匹とまっているのが見られました。

沢から上る傾斜の途中で、タネガシマムヨウランがありました。
葉のない腐食性のランです。


タネガシマムヨウラン(2017年12月4日1時前 名護市内)

もう少ししたら花が咲きそうな雰囲気だったので、見るのが楽しみです。

(NM)

【関連記事】
● 2017年6月15日 リュウキュウアカガエル観察日記
● 2017年4月24日 リュウキュウアカガエルの子、上陸!
● 2017年4月14日 夜の渓流 〜カエルのその後と動物注意報〜
● 2017年2月18日 カエルを探しに再び夜の渓流へ!
● 2017年2月12日 夜の渓流 〜リュウキュウアカガエルなど〜