日々のなごはく。

名護博物館ブログ

今年の初遭遇 〜名護市内のクロイワトカゲモドキ〜

最近、昼はなかなか時間が取れず、夜に様々なフィールドへ出かけることが多くなりました。
・・・といっても、がっつりとした調査ではなく、わりと気楽に行ける身近な場所へ足を運び、1〜2時間ほど観察することが多いです。

それでも、意外と身近な場所で新しい発見があるので、侮れません。

数日前に足を運んだ名護市内のある場所(名護博物館から車で10分ほどの場所)では、今年初のクロイワトカゲモドキに出会えました(名護市外のフィールドでは姿を見ていましたが)。



クロイワトカゲモドキ 
Goniurosaurus kuroiwae kuroiwae (2018年4月20日 名護市内)

クロイワトカゲモドキは、沖縄県指定天然記念物で、環境省沖縄県のレッドデータで、どちらも絶滅危惧II類(VU)に指定されています。
沖縄本島屋我地島、古宇利島、瀬底島のみで見られる固有亜種ですが、これらの生息地の中でも遺伝的に異なる集団が含まれることが最近の研究でわかっているようです。

なお、「クロイワ」の名は、このブログでもたまに話題に挙がる、今から100年ほど前の博物学者・黒岩恒(ひさし)氏に因んでいます(こちらの記事など)。

黒岩氏は、国頭農学校(現在は名護市宇茂佐にある県立北部農林高校)の初代校長であり、名護に縁のある人物ですので、クロイワトカゲモドキもまた、名護に特別な縁のある生きものと言えるのではないでしょうか。
ちなみに、クロイワトカゲモドキは、黒岩氏が採集した標本に基づいて、当時の動物学の権威、浪江元吉氏によって1912年に新種で発表されています。
沖縄の自然に携わる関係者の中では、浪江氏は、やんばるの固有種ナミエガエルに名前が使われているので有名ですね。

さて、今回クロイワトカゲモドキに出会った場所は、これまで足を運んだことがなかったのですが、その50mほど手前には何度も足を運んでいました。
少し位置が変わっただけで、周りの環境もガラッと変わるので、これまで出会わなかった生きものたちに遭遇することがあります。
こういう状況を考えると、きっと身近に知られていない生息場所がまだまだあるんじゃないかな・・・と思うわけです。

しかも、この場所では比較的狭い範囲で数個体のクロイワトカゲモドキを見つけることができました。


クロイワトカゲモドキBがあらわれた!


クロイワトカゲモドキCがあらわれた!

・・・今後も定期的に足を運んでみようかと思います。

ところで、すぐ近くには古い石積があり、昔の人のくらしの跡が伺えました。
この石と石のすき間・・・彼らが潜んでいないかな〜と、目をこらしたところ・・・


いました!
この写真中央のやや左下に写っているのですが、わかるでしょうか?

(答え)

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イボイモリ Echinotriton andersoni

最近の記事でおなじみのイボイモリ沖縄県指定天然記念物)でした!

のどをプクプクさせて、正面から見ると黒いカエルみたい(笑)


同じ個体。実は、周辺を含めてこの場所でイボイモリを見るのも初めてでした。
環境的にいるだろうなぁとは思っていましたが。

クロイワトカゲモドキとあわせて収穫の多い一夜でした。

なお、クロイワトカゲモドキとイボイモリは、天然記念物(文化財保護法だけでなく、国内希少野生動植物種種の保存法)にも指定されています。
許可なく採集することは固く禁じられており、違法行為なので注意が必要です。

(NM)