日々のなごはく。

名護博物館ブログ

小学校の幸地川学習 2019 

今年も始まりました!
名護博物館のお隣にある東江小学校で毎年行われている幸地川の学習です!
学校での事前学習を行ったあと、淡水域(中流)に出かけて生きものを探しました。

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出前授業の様子(2019年7月)

この場所は、地域の方などが定期的に草刈りをして下さっていますが、水際の草は残してくれています。

そのため、今回の学習でも草かげから色々な生きものを見つけることができました

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今回の学習で見つかった生きもの いろいろ(2019年7月)

上の写真には、イッセンヨウジ・テングヨウジ(細長い魚)、ユゴイの幼魚(左上)、タネカワハゼ(まん中下)、ザラテテナガエビ(左)が写っています。

これらの多くが水際の草かげから見つかりました。

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生徒がつかまえたコンジンテナガエビ(2019年7月)

生徒が草かげで大きなコンジンテナガエビを見つけていました。上の写真はメスでおなかにオレンジ色の卵を抱えています。

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羽化してまもないオキナワオジロサナエ(2019年7月)

水際の草に羽化して間もない色のうすいトンボがとまっていました。
同定(種を見分けること)に自信がなかったので、トンボに詳しい沖縄市のTね学芸員にきいたところ、オキナワオジロサナエだろうとのこと。

この場所ではめずらしいです。普通は森におおわれた上流域で見られるのですが、連日の雨で流されてきた幼虫が羽化したのかもしれないですね。

去年の学習時も大雨の後だったためか、幼虫が見つかっています(記事はこちら)。

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さて、上の写真は生徒が見つけた生きものですが・・・その正体は・・・?

 

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生徒が見つけたオオウナギの稚魚(2019年7月)

答えは全長6 cmほどのオオウナギ(と思われる)の子どもでした。捕まえた子はなかなかの見つけ上手です。
オオウナギの子どもは早瀬の石の下などから見つかることが多い気がします。

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同じオオウナギの子ども

体の色はうすく、まだ半透明な部分も多くて、赤い鰓(えら)やおなかの中身も透けて見えています。

オオウナギの大きな特徴である斑模様はまだ出ていません。
10 cm以上になるとはっきりしてくるという報告があります*1

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オオウナギの幼魚(2018年2月採集)

上の写真は、去年別の川で見つけたオオウナギで全長10 cmほど。斑模様が少し出てきているのがわかります。

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今回の学習で見つかったオオウナギの子ども

沖縄本島の川では、オオウナギのほかに数は少ないですがニホンウナギも生息しています。斑模様のない稚魚を見分けるのはムズカシイですが、脊椎骨数の違いのほか、頭部の長さや鰭(ひれ)の位置関係で2種を見分けることができるようです。

上の写真は、今回見つかった子どもの
 ①頭の長さ、
 ②背鰭のはじまりからしり鰭のはじまりまでの長さ、
がわかるように黒い線を引いたものです(鰭が見やすいように暗くしてコントラストを強める等の画像処理をしています)

オオウナギでは、子どもの頃から①より②の長さの方が長い傾向があることが知られているようです*2。このことから、今回見つかったのはオオウナギと判断しました。

 

今回の学習では魚やエビ、カニ、貝、水生昆虫を合わせて約30種が見つかりましたが、グッピーなどの外来種は見つかりませんでした。私はこの場所の潜水観察も定期的に行っていますが、ユゴイなどの肉食魚がたくさんいるためか、グッピーなどはほとんど見られません。

街中を流れる川でありながら、このような健全な状態が保たれているのは素晴らしいことです。

観察が終わった生きものは川へ返しましたが、一部は名護博物館で飼育しております。

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ユゴイの幼魚(2019年7月採集)

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オオクチユゴイの幼魚(2019年7月採集)

川では判別がつかなかった大きさ2 cmちょっとしかないユゴイのなかま2種の幼魚。
水槽に入れると、鰭(ひれ)の模様がはっきり出てきて見分けることができました。

よくよく見ると、体型や体に対する目の大きさなどにも違いがあるような気がしますが・・・はたして?

 

さて、今回は淡水域の野外学習でしたが、2学期になったら今度は汽水域へ足を運ぶ予定です。

生きものを発見するときの子どもたちの目聡さには驚かされることもよくあります。
今年はどんな発見があるのか楽しみです。

 

なお、最近名護市内において特定外来生物のタイワンハブが増えており、草むらに入ることを危険だと思う方も多いかもしれません。

私の経験上、これまで100回以上市内の色々な川へ出かけていますが、ハブやタイワンハブを見かけたことは一度もありません。水辺に多いとされるヒメハブでさえ、ほとんど出会ったことがありません(ただし、名護市より北のやんばるの川では話は別です)。

むしろネズミなどが多い民家や畑の周辺でこれらのヘビの目撃例が多いです。

市内において、川辺の草むらにこれらのヘビが絶対いないとは言い切れませんが、昼間に出会う可能性は高くないように思います。

大人の立場として、子どもたちの安全を考えるのは当然のことですが、過剰反応によって子どもたちを自然から遠ざけたり、自然にふれる機会を奪ってしまうようなことにはなってほしくないなぁ・・・と感じています。

自然とのふれあいは様々な感性を育み、危険に対するカンやその対処方法も学ばせてくれるものだと信じています。

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川の出前授業の様子(2019年7月)

(NM)

*1:西源二郎・今井貞彦(1969)屋久島産オオウナギ幼期の生態ならびに形態学的研究. 鹿児島大学水産学部紀要, 18: 65-76. 

*2:西源二郎・今井貞彦(1969)屋久島産オオウナギ幼期の生態ならびに形態学的研究. 鹿児島大学水産学部紀要, 18: 65-76.