日々のなごはく。

名護博物館ブログ

新顔の・・・?

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新顔の・・・?

いかついんだか、ひょうきんなんだか、よくわからない新顔の生きものを飼い始めました。その正体は・・・?

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タウナギ(2019年6月 名護市内)

タウナギ(沖縄名:トーンナジャー)でした。
ウナギと名はつきますが、全く違うグループの魚です。
よく見ると顔つきも違いますが、胸びれもないのでウナギと全然ちがうことがわかります。

魚なのに空気呼吸ができるので、水中の酸素が少ない環境でも平気です。
たまに水面から鼻先を出して呼吸している姿を見かけることがあります。

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呼吸中のタウナギ


さて、このタウナギ、昔は水田地帯にウジャウジャいたと言われていますが、現在では環境等の変化によって絶滅が心配されている魚です。名護市でも生息情報は限られています。

沖縄の川で見られる魚やエビ・カニ、貝の多くが、海と川を行き来する「通し回遊」を行いますが、タウナギ一生を淡水中ですごす純淡水魚です。

通し回遊を行う生きものは、たとえば川の環境などが悪化して一度姿を消しても、環境を復元してやれば、海を介して他の場所からもどってくる可能性があります。

しかし、タウナギのような純淡水魚は、環境が失われてその地域で絶滅してしまうと、二度と元には戻りません

しかも、琉球列島のタウナギは、本州や九州、台湾やインドネシア、大陸のタウナギとは遺伝的に独立した集団であることがわかっています。地域の宝としてしっかり保全していく必要があります。

なお、他の純淡水魚としては、沖縄ではミナミメダカ(以下メダカ)やヒョウモンドジョウ(以下ドジョウ)などの一般的によく知られた面々がいますが、いずれも絶滅が心配されています。

これらの純淡水魚は、名護市内に限ってみても生息情報が十分に把握されているとは言えません。絶滅危惧種の情報は、乱獲のリスクと隣り合わせなので非公開とされていることも多く、関係者間の情報共有も十分ではない現状があるように思います。

私の知る限り、名護市内においてメダカやドジョウに比べれば、タウナギはまだ多くの場所で生き残っています。

今回飼育を始めた個体は、全長40 cmくらい。知人のAさんから頂いたものですが、その産地は私の知らない場所だったので、生息場所にも何度か一緒に同行させてもらい、生息状況などを見てきました。

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顔を出すタウナギ(2019年6月 名護市内)

上の写真のタウナギは、底にたまった落ち葉などの中から顔を出していましたが、こちらに気づくとすぐに顔を引っ込めました。

生息場所の現場でも写真が撮れてよかったです。

今回の目視調査で、細い水路の狭い範囲で、1回あたり数匹を確認することができました。
サイズも小型から比較的大型の個体まで見ることができました。


どうやら、この場所はタウナギにとって良好な環境が保たれているようです。
今後も継続的に観察を続けたいと思います。

 

(NM)