日々のなごはく。

名護博物館ブログ

台風後の澄んだマングローブ水域

久々に名護市内の川の水中観察に出かけました。

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ヒメツバメウオの幼魚(2019年9月 名護市内)

別の川を見た帰りにマングローブ林のある川の汽水域(海水と淡水の混じる場所)に寄ってみたのですが、台風で増水した影響が残っているためか、いつもより水が澄んでいました。
マングローブ林のある汽水域は濁っていることが多く、なかなかきれいな水中写真を撮るチャンスが少ないので、その場の勢いで川にジャブジャブ入り観察開始!

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枝の下にかくれるヒメツバメウオの幼魚(2019年9月 名護市内)

川岸に張り出した木の陰や水生植物の周りには、全長1~3 cmほどのかわいらしいヒメツバメウオやクロホシマンジュウダイの幼魚がたくさん潜んでいました。
上の写真には2匹写っていますが、どこにいるかわかるでしょうか?

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ヒメツバメウオの幼魚(2019年9月 名護市内)

いかにも熱帯ですよ!というカラーのヒメツバメウオの幼魚。

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ヒメツバメウオの幼魚(2019年9月 名護市内)

正面から見ると平たいです。

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クロホシマンジュウダイの幼魚(2019年9月 名護市内)

水面に映って美しさ2倍。

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クロホシマンジュウダイの幼魚(2019年9月 名護市内)

クロホシマンジュウダイの名前にある「黒星」模様は、写真の幼魚にはまだありません。成長するにつれ、縞模様がだんだんと黒い点模様に変化していきます。
・・・と同時に、きれいなオレンジの体色も失われて地味な色になってしまいます。

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アマミイシモチの群れ(2019年9月 名護市内)

水際の植生下には、数百匹からなるアマミイシモチの群れが見られました。
マングローブのある汽水域で見られる代表的な魚です。これだけの群れが見られるこの場所の自然の豊かさを実感しました。

ちなみに、上の写真のアマミイシモチの群れには、ゴマフエダイの幼魚も混ざっています。

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ゴマフエダイの幼魚(2019年9月 名護市内)

これがゴマフエダイ(沖縄名カースビ)の幼魚。この魚は釣りの人気対象種で食用にもなる海産魚です。
沖縄で食用となっている海産魚には、幼少期をエサの豊富な汽水域で過ごす種がたくさんいます。ですから、水産資源的にも汽水域の自然が豊かであることは大事なことです。

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ゴマフエダイギンガメアジの幼魚(2019年9月 名護市内)

他の魚の後を付いて回る習性のあるギンガメアジ(沖縄名ガーラ)の幼魚。
ギンガメアジは幼少期に川に進入してくる海産魚の代表格で、汽水域だけでなく淡水域でもよく見られます。

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スミゾメスズメダイの幼魚(2019年9月 名護市内)

写真のスミゾメスズメダイや上で紹介したアマミイシモチは成魚になっても汽水域で生活します。
魚は子どもの頃の方がきれいな色や模様をしていることが多いですが、スミゾメスズメダイの幼魚に見られる青やオレンジの体色も成長するにつれて失われ、名前の通りの「墨染め」のような黒一色の地味な体色になってしまいます。

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ミツボシゴマハゼ(2019年9月 名護市内)

マングローブ林の生えている水際の浅い場所では、全長15 mmもないミツボシゴマハゼが見られました。魚類の中(というか脊椎動物の中)では最小級です。

 

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ホシマダラハゼ(2019年9月 名護市内)

一方でマングローブ林の生えているやや水深のある場所では、同じハゼ類でも最大級(300 mm以上)の大きさに成長するホシマダラハゼが潜んでいました。

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マングローブの生えている泥の穴から顔を出す何か。
一見カメのようにも見えますが・・・

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ゴマホタテウミヘビ(2019年9月 名護市内)

ゴマホタテウミヘビでした。
マングローブ林内でたくさん見られるウナギ目の魚です。
顔つきは全然似ていないのですが、泳ぎ回っている姿が似ているためか、よくウナギと間違われます。
夜行性なので、昼間は穴の中などでじっとしていることがほとんどです。

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川を上るユゴイ類とボウズハゼの子ども

沖縄の川の魚は子ども時代を海で過ごす種が多数派。
流れが速い場所では、海からやってきたユゴイ類やボウズハゼの子どもたちが上流を目指して必死に泳いでいました。これらの成魚は淡水域の中~上流でくらしています。

汽水域は海と川をつなぐ通過地点としても大事な場所なのです。

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さて、今回の水中観察で陸上からは見えない部分もよくわかり、新鮮な視点で観察することができました。

実は、この場所は学校の出前授業でよく利用しており、水上から網などを使って生きものを探すことはしょっちゅうやっているのですが、これまで水中観察はしたことがありませんでした。
今回の観察で自分の中で新たな発見もあり、よかったです。

今後も条件のよいときにぜひ観察してみたいですね。

(NM)