沖縄は寒暖の差が激しい日が続いていますね。
先週末までは暖かかったですが、今週はまた冷えこんでいます・・・体調を崩さぬようご注意を!
さて、数名の博物館友の会メンバーと一緒に名護市内の沢を歩いてきたので、少し紹介したいと思います。
この沢は名護市の有名な川の支流のひとつですが、これまで歩いたことがありませんでした。私にとって未知の沢です。
本流から続く支流の沢沿いには畑が広がっており、人の生活臭を感じる環境が続いていました。
上の写真のアカギは成長がとても早く、すぐに大木になります。
庭木や街路樹などでもよく見かけますね。
国外や県外の本来分布していない場所では、侵入したアカギが外来種として問題視されていることもあるようです。
沢の川岸は自然石を積んだ古い石積がしばらく続いていました。
沢沿いに広がる畑が崩れないように積んだものでしょうか。
名護市内では、あちこちで川沿いにこのような石積が見られます。
いつ頃作ったものなのか、気になるところです。
石積ができた後に生えたであろう木の板根(ばんこん)。
見事なもので、ある種の美しさを感じます。
根が張ると石積は壊れるでしょうが、拡がった根が石積の代わりに護岸としての役割を果たしているようにも思います。
また、天然の階段にもなってくれるので、歩く方からすると助かります!
なお、暖かい地域では有機物の分解が速いため土壌が薄くなることから、樹木が深く根を張ることができず、名前の通り板のような根(倒れにくい)が発達することが多い、と考えられているようです。
友の会のKさんもブログで紹介していましたが、この沢はムベの落花が目立ちました。
また、アマミイナモリもたくさんあり、かわいらしい白い花を咲かせていました。
よく似た花にサツマイナモリがあり、同じ場所で見られますが、大きさなどが違います(過去の紹介記事はこちら)。
この沢をしばらく上っていくと、岩盤が目立つようになりました。
やんばる(沖縄本島北部)の川の上流でよく見られる風景です。
めずらしく植物や風景ばかり紹介していますが、もちろん魚やエビ・カニ、水生昆虫なども見られました。
ただ個人的にはグッとくる生きものは発見できず・・・
上の写真は、タニガワカゲロウのなかま(左)とノギカワゲラのなかま(右)です(幼虫)。
一見似ているようにも見えますが、全く別のグループの水生昆虫です。
この沢、上流の渓流部分は水が豊富なのですが、本流に近い下流側にくると水が全く流れていません。いわゆる「瀬切れ」と呼ばれる現象です。
・・・豊富な水はどこへ行ってしまったの?
水がなくなる部分の境界を見てみると、浸みこむように・・・地面の中に消えていました。川では一見すると表面に水が流れていなくても、地下で水が流れている(伏流水)ことがあります。
ところで、「瀬切れ」は、川の魚やエビ・カニ、貝類などにとってマイナスの要素が大きいと考えられています。これらの生きものの多くが一生のうちに川と海を行ったり来たりする生活を送るからです。
当たり前ですが、水がなければ多くの水生生物は通行できません(一部の生きものは地下の伏流水を使って通行している可能性もありますが)。
ところが、水が流れていないこの瀬切れ部分の上流にある渓流では、海から上ってくるクロヨシノボリ(ハゼのなかま)やテナガエビ類、ヌマエビ類が見られるのです。
つまり、雨の後などで水が流れているタイミングを逃さず、下流側(本流)から上ってきた、ということになります。
なかなか、たくましいですね。
ただ、今回水の流れている部分で確認した魚はクロヨシノボリのみであり、種数としてはとても寂しいものでした。
もちろん、もっとよく探せば他にも見つかるとは思いますが、瀬切れによって上ってこられる生きものが限定されている状況と考えるのが自然だと思います。
さて・・・やんばるのあちこちで地域の方に昔のことを聞くと、口をそろえて「昔は川の水がもっと豊富で、深い淵(ふち)がたくさんあった」と仰ります。
一方で、今のやんばるではあちこちの川で水量不足による瀬切れが見られ、河川環境問題の一つとして捉えられています。
果たして昔の川の環境はどんなものだったのか、タイムスリップしてぜひ見てみたいものですね。
(NM)