日々のなごはく。

名護博物館ブログ

自然史標本作製・整理中!

新博物館建設準備の一環として、資料整理を進めていますが・・・なかなか思うようには進みません。

自然史の資料は放っておくと、ほとんどの場合が腐ったり、風化したりして、そのままだと未来へ残すことができません

そこで標本作らなければならないのですが・・・これが時間のかかる地道な作業の積み重ねです。

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マダライルカの左の胸鰭(むなびれ)

 

この時間をどう確保するか・・・職員の少ない地方の小規模博物館で常に学芸員が頭を抱えている課題ではないでしょうか。

最近、ボランティアや臨時アルバイトの方に手伝ってもらえるチャンスを得たので、力を借りながら作業を進めているところです。

今週は、マダライルカの胸鰭(むなびれ)骨格(上の写真)をクリーニングしました。
2016年に死体を入手し、骨格を取るために砂の中に埋めておいたものです。

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マダライルカ胸鰭の埋設時の様子(2016年5月)

砂場に埋めるのは、微生物などに肉を分解してもらい骨にするためで、鯨類の骨格を作るときには一般的に行われている方法です。

全身(2頭分)があるのですが、今回紹介するのは胸鰭だけ。特に胸鰭は細かい骨が多く、そのまま埋めるとバラバラになり、配列などがわからなくなってしまうため、板の上に固定し、目の細かい網でつつんで埋めます。

通常は、一年ほど埋めておけば十分なのですが・・・

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掘り出した直後の様子(2019年4月)

・・・掘り出したのは、2019年。
砂の中に埋める時間が長すぎると骨まで痛めてしまうことになりかねません。
3年は明らかに長すぎます・・・が、なかなか手が回らず時間が経ってしまいました。

ここからさらに一年、作業時間が見つけられず間が空くことになります。

・・・そして今週になってようやく作業再開!

掘り出した胸鰭を包んでいる網を・・・慎重・・・外します。
植物の根などが中に入りこんでいるため、一つ一つ切ってから網をはがしていかないと、中の骨が引っ張られてすぐに動いてしまいます。
息の止まる瞬間です。

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網を外した状態のマダライルカ胸鰭骨格(2020年3月)

網を外したあと、ていねいに砂を取り除いた状態が上の写真です。
この作業では筆やハブラシが活躍します。
私たちと同じように鰭の中には5本の指があります。

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骨の取り上げ(2020年3月)

骨の向きや並びを記録し、砂を落としながら、トレーに移しかえました。
少し痛んではいますが、問題なく標本にできそうでホッとしました。

骨には脂がたくさん含まれているので、このあと脱脂や漂白といった作業が控えています。また、骨がもろくなっている場合は修復したり樹脂で補強したりといった作業も必要です。

胸鰭以外のパーツも残っていますし・・・ゴールへの道のりはまだまだ遠いです。

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ほかにも、去年で公開終了した常設展示室の資料整理も同時進行中です。

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2階常設展示室の昆虫展示(2014年に撮影)

一目でやんばるの昆虫の多様性がわかる常設展示。
棚の材料もやんばるの木材を使うことにこだわったそうで、作り手の熱い想いを感じます。
この展示は、1984年に開館して以来、人気の展示の一つでした。

しかし、この昆虫標本たちは展示していたこともあり、まだデータベースに登録されていません。標本の1点1点にしっかりと採集情報を記したラベルが付いており、当時の自然環境を知る手がかりとなる貴重な標本群です。

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常設展示の昆虫標本の一部(2020年3月)

そこで、引越しの準備もかねて展示の一部を外し、中の昆虫ラベルを記録確認する作業を開始しました。
おそらく1984年に開館して以来、約35年ぶりにケースカバーを外しました。
開けた瞬間に、35年前の空気の香りが・・・! 薬品のにおいなんですけどね

まだ一部しか見ていないですが、多くは開館前の1983年に採集されたもののようです。
ラベルの採集日時から、毎晩のようにやんばるの各地(あるいは中南部まで)に出かけて資料収集に励んだことが伺えます。

様々な人々の公私に渡る情熱が今の名護博物館を創ったんだなぁ・・・と、改めて感じました。

なお、一部標本の入れ替えは行いますが、この展示棚はそのまま新博物館の常設展示で使うことを検討しています。

気が遠くなる作業がまだまだ山積みですが、一つずつ頑張って終わらせていきたいところです。

(NM)