今年も夏鳥アカショウビン(リュウキュウアカショウビン)の事故が多発しているようです。
先日は、名護市三原で死亡したアカショウビンが名護博物館に持ちこまれました。
リュウキュウアカショウビン Halcyon coromanda bangsi
彼らは、春〜夏に沖縄にやってきて、森の枯木などに巣穴を掘り、その中で産卵・子育てを行います。
そのため、活発に飛び回るこの時期、民家の窓ガラス等に衝突して死んでしまう事故が多くなるのです。
以前、博物館に死体で持ちこまれる冬鳥の代表種としてシロハラを紹介しましたが(こちら)、夏は圧倒的にアカショウビンが多いです。
ここ5年(2012〜2016年)の間にガラス衝突等で死亡して当館が引き取ったアカショウビンは、記録されているだけでも13羽になります(保護した後、死亡したもの含む)。年2〜3件のペースで引き取っており、時期は4〜9月に集中しています。今年はすでに2羽持ちこまれていますが、まだ6月なので、さらに増えるかもしれません(2016.11.18追記 9月に3件追加され、今年は5羽となりました)。
そして残念ながら、保護された後に野生に帰ることのできたアカショウビンは、過去5年で1羽のみです。
2015年7月に名護市宇茂佐で保護されたアカショウビン幼鳥
この個体は、胸にまだら模様のある幼鳥で、うまく飛べずに地面に落ちているところを保護されました。
どこかにぶつかって傷ついたわけでなく、元気だったので、とりあえずは野生に返ることができました。
一方で、保護時に元気でも、骨折していたり、傷ついていたりすると、あっという間に死んでしまいます・・・
一番上に写真でのせたアカショウビンも、一見外傷はありませんでしたが、解剖してみると頭と首の関節部分に内出血が見られ、強い衝撃を受けた後がありました。窓ガラスに頭から突っ込んだのでしょう・・・
これらの結果から見ても、事故を未然に防いでやることが大事なんだなと実感しています。
鳥の窓ガラス衝突を防止するためには、バードセーバーが効果があるとされています。
大型のタカなどの形をした窓ガラスに貼るステッカーのようなものですが、ただのポスターを貼るだけでもそれなりの効果があるようです。
バードセーバーや野生動物救護に関することは、下記の資料がわかりやすかったのでご紹介します。
野生動物レスキューBOOK 西表野生生物保護センター
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さて、残念ながら死んでしまったアカショウビンは、計測などをして冷凍庫に仮保管しています。
今回、冷凍庫にたまっていたアカショウビンの一部を仮はく製にしました。
以前にも紹介したとおり(こちらやこちら)、標本として仮はく製を作るのは博物館の大事な仕事の一つです。
これから先は、はく製を作ったときの写真が出てきます。
今回紹介するのは解剖後の過程で内臓等は写っていませんが、苦手な方はご注意ください。
おなか側を切り開き、肉と内臓を取ったアカショウビンです(一番上の写真の個体です)。
解剖してメスだとわかりました(卵巣がありました)。
ここまでですでに半日かかっています。
洗い終わったら、筆粉(籾殻を焼いた灰)を使って羽を乾燥させます。
筆粉が水分を吸収し、数分で乾かすことができます。
胴体や内臓の代わりに、竹串と木毛で作った胴芯(+αで脱脂綿)を入れ・・・
この仮はく製は、今後、学術用や教育用の標本として活用されます。
人間本位な考えではありますが、これで彼らの死もムダにならない!
・・・と思っています。
ちなみに、アカショウビンの子育ての様子については、タカの渡り調査を一緒にやっているHさんのブログ
名護・自然観察日記で紹介されています。
市内で撮影された素晴らしい写真がたくさんあるので、ぜひご覧ください。
(NM)
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