日々のなごはく。

名護博物館ブログ

久しぶりの紺色に照る?ハゼ ほか、市内川の生きもの

あっという間に10月も半ばにさしかかっています。

先月のことですが、市内のいくつかの川へ水中観察に出かけたときのこと、 久しぶりのうれしい顔ぶれに会いました。

輝くようなブルーの体色が美しいコンテリボウズハゼのオスです。
和名のコンテリ(紺照)ですが、魚の体色変化や光の反射具合によって紺に見えることもあるし、そうでない場合もあります。

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コンテリボウズハゼのオスA(2020年9月 名護市内)

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コンテリボウズハゼのオスA(2020年9月 名護市内)

上の2枚は同じ個体ですが、体色の差により違った印象を受けるでしょう。
1枚目は明るい場所でフラッシュ撮影した写真、2枚目は自然光で撮影した写真です。

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コンテリボウズハゼのオスB(2020年9月 名護市内)

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コンテリボウズハゼのオスB(2020年9月 名護市内)

こちらは別のオス。同じように上がフラッシュ撮影、下が自然光です。
上の方は暗めの場所だったので、フラッシュの反射による体色が強く出ています。

自然光の方が見た目に近いですが、ある程度の明るさがないとうまく撮影できません。

 

さて、和名の由来となったギラギラの紺色オスは今回観察できませんでしたが、久々に本種の姿を見ることができたので、実りある一日でした。

コンテリボウズハゼは、沖縄県レッドデータブックで絶滅危惧ⅠA類に指定されている希少種なので、市内でも生息している川は限定されています。

さらに、そのような川でも最近姿を見かけていなかったような気がして、自分の調査記録を見返してみたところ、2018年5月の記録を最後に約2年半ぶりの確認でした。

2012年〜2013年頃は複数の川でよく見かけたのですが・・・

最近の確認がなかったのは、まぁ・・・私がフィールドに足を運ぶ頻度が減っているのが理由として大きいのですが(汗)、川で見られる生きものの種数や個体数は年によって波があるようなので、そのことも関係しているでしょう。

川の話題を紹介するたびにふれているところですが、沖縄の川で見られる魚、エビ・カニ、貝などのほとんどは、川と海を行き来する回遊性の生きものです。

このような生きものたちは、ふ化して一定期間を海(汽水域)で過ごした後に川を上ってくるので、その年に川でたくさん見られるかどうかは、海からやってくる量に左右されるのです。

ただ、その量がどのような要因で決まるのか・・・そこは明らかになっていませんが・・・

 

生きものとの出会いは一期一会。今年はたくさんいるからといって、来年もたくさん見られるとは限りません。出会いを逃すと何年、何十年、下手をすると一生もう出会えないかもしれません。

生きものを追うことを生業やライフワークにしている「生きもの屋」と呼ばれる人たちがいますが、諸先輩方から「あのとき時間や体力的余裕がなくて出会いをスルーしてしまったけど、惜しいことをした!」といった後悔の声をよく聞きます。

私自身、知識がなかった頃に軽く流してしまった生きものとの一瞬の出会いについて、後悔しているものがいくつかあります。

時間、体力、知識、忙しさ・・・事情は色々ありますが、一瞬の出会いを逃さないことを肝に銘じて、これからもフィールドに足を運びたいですね。

 

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さて、他にもいろいろ生きものが見られたので、ついでに紹介しておきましょう。

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左からナンヨウ・ボウズ・コンテリ(2020年9月 名護市内)

コンテリボウズハゼ(右)に近いなかまのナンヨウボウズハゼ(左)やボウズハゼ(中央)。

どの種も、上の写真のように石などに生えた藻類をはぎとって食べます。なかよく並んで食事していました。

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イッセンヨウジ(2020年9月 名護市内)

中流域の定番種、イッセンヨウジ。子どもたちにも人気あり。

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シマヨシノボリ(2020年9月 名護市内)

流れの速いところにいるシマヨシノボリ。沖縄で見られるヨシノボリのなかまでは一番派手なように思います。

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オオクチユゴイ(2020年9月 名護市内)

中流域で存在感を見せるオオクチユゴイ(沖縄名ミキユーなど)。素早く泳ぎ回るのでなかなか撮影しづらいですが、うまく写真に収まってくれました。

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ギンガメアジ(2020年9月 名護市内)

オオクチユゴイの群れに混ざるギンガメアジ(沖縄名ガーラ)の幼魚。
淡水域にも入ってくる海水魚の代表格です。
おもしろい顔が撮れました。

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ゴマフエダイの幼魚(2020年9月 名護市内)

こちらも海水魚ゴマフエダイ(沖縄名カースビ)。幼魚は汽水域を利用して成長しますが、たまに潮の影響がない淡水域下流にもいます。今回久々に淡水域で見かけました。

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クロホシマンジュウダイの幼魚(2020年9月 名護市内)

主に汽水域で生活するクロホシマンジュウダイ。こちらの幼魚の群れも、めずらしく淡水域で見られました。

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オオウナギの幼魚(2020年9月 名護市内)

沖縄の川でオオクチユゴイ以上に圧倒的な存在感を放つオオウナギですが、写真の個体は40cmほどのかわいいサイズ。

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オオヒライソガニ(2020年9月 名護市内)

立派なオオヒライソガニ中流域ではモクズガニと双璧をなす代表的なカニです。
今年はモクズガニより本種の方をよく見かけている気が。

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ミドリガメ(2020年9月 名護市内)

残念なことに、元ペットで捨てられたと思われるミドリガメ外来種もいました。
このように川の水中で生活するカメは、やんばるには元々存在しません。
外来種のカメが増えれば、その分本来あるべきだった自然が破壊されることになります。

ペットは責任を持って死ぬまで飼育する必要があります

(NM)