日々のなごはく。

名護博物館ブログ

フタオチョウ観察日記 2021 その3.5 中庭の生きものたち

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羽化したフタオチョウ(2021年6月17日 名護博物館)

しばらく更新できていなかったのですが、4月から観察を続けてきた名護博物館中庭のフタオチョウについて、6月17日の朝にはじめて羽化したチョウを確認することができました。

ただ、蛹(さなぎ)の存在に気づけていなかったので、ある朝羽化したチョウに気づく・・・という感じで、羽化の様子などは観察できませんでした。

その後7月に入ってから、別の個体で蛹から羽化するまでの様子を観察できたので、次回記事でまとめて紹介したいと思います。

名護博物館中庭の生きものたち

さて、フタオチョウの観察を続けることによって、これまであまり見向きもしなかった中庭の生きものたちの存在にも改めて気づくことができました。

今回はそんな生きものたちをピックアップ。

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クマゼミの抜殻(2021年6月17日 名護博物館)

まずはクマゼミ。毎日のように新しい抜殻があちこちに増えていきます。

今年の名護博物館周辺での初鳴きは6月3日でした。

ちなみに、過去のメモを見返してみると、

2013年:6/13 2014年:6/26 2015年:6/10 2016年:6/2
2017年:7/1 2018年:6/17 2019年:5/5 2020年:6/10

でした。あくまで博物館周辺だけの話ですが、大体6月に鳴き始めるようです。
鳴き始めは簡単に気づけますが、鳴き終わる日を記録するには・・・根気と集中力が必要ですね。

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クマゼミの羽化(2021年6月26日 名護博物館)

これまでに確認したフタオチョウの羽化は早朝でしたが、クマゼミは夜間に羽化しているようです。サナギの様子をチェックするときに何度か羽化しているところを目撃しました。上の写真は21時頃。

昼間シャワシャワとやかましく鳴くクマゼミには、個人的に風情も何も感じないのですが・・・夜の静寂の中でひっそりと羽化している様子はきれいだなと素直に思います。

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フタオチョウ蛹とクマゼミ羽化(2021年6月22日 名護博物館)

フタオチョウの蛹の横でクマゼミが羽化。ぶら下がりやすい物件なのでしょうか?

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クマゼミを捕えたオオジョロウグモ(2021年7月8日 名護博物館)

羽化して飛び立ったクマゼミを待ち構えるかのごとく、オオジョロウグモが巨大な網を毎日張っています。何度も餌食になっているクマゼミを目撃しました。

抜殻の数からしても、毎日相当数のクマゼミが羽化しているようなので、エサには困らないでしょうね。

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オオジョロウグモ(2021年6月17日 名護博物館)

こちらはハナムグリのなかまを捕えたオオジョロウグモ

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オオシマアオハナムグリ(2021年6月17日 名護博物館)

ハナムグリのなかまも大量に発生しているようで、館内にも度々侵入してきます。
建物の裏などで堆肥づくりを行っていますが、その中には幼虫がたくさんいます。

休館する前は、近所の子どもたちがよく幼虫を掘りにやってきました。
博物館で飼育している魚やカメなどのエサにもなっています。

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オキナワクロツヤキマワリ(2021年6月17日 名護博物館)

フタオチョウの幼虫のいるヤエヤマネコノチチの幹には、夜になると黒い甲虫の姿が・・・
やんばるの森でよく見かけるオキナワクロツヤキマワリ(沖縄島固有種)でした。

f:id:nagohaku:20210618215929j:plainカブトムシやカナブンのような、つぶらな瞳をなんとなくイメージしていたのですが、よくよく顔を見ると、目(複眼)がかなり大きいですね。

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洞に隠れるオキナワクロツヤキマワリ(2021年6月17日 名護博物館)

昼間は姿を見かけないので、どこにいるのかと思ったら、小さい洞の中にところ狭しと詰まっていました。
集まっているのが苦手な方は、ゴメンナサイ!

以前の記事でも紹介したことがあるのですが、名護博物館周辺では近くの名護岳からやってきたと思われる生きものがチラホラ見られます。

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ヤンバルヤマタカマイマイ(2021年6月17日 名護博物館)

ある晩、ヤンバルヤマタカマイマイと思われるカタツムリを見つけました。恩納村より北の沖縄島のみで見られる固有亜種とされています。やんばる(沖縄島北部)のフィールドにおいて特にめずらしいとは感じない種ですが、市街地の外れにある名護博物館でも見られるとは思っていませんでした。

最近できた沖縄県の条例で希少野生動植物種に指定されており、許可なく採集はできないので要注意です!

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リュウキュウベニイトトンボ(2021年6月17日 名護博物館)

敷地内に水辺はないのですが、近くに川もあるので水辺で見られるトンボも姿を現します。

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キシモフリクチブトカメムシ幼虫(2021年6月18日 名護博物館)

前回の記事(こちら)でフタオチョウの幼虫を殺害したキシモフリクチブトカメムシ。その卵と思われる塊から、幼虫が出てきていました。

苦手な方はゴメンナサイ!(2回目)

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フクギミバエ(2021年6月17日 名護博物館)

葉の裏にとまるハエ。
ハエの種など全くわかりませんが、調べてみるとフクギミバエとのこと。

ナルホド、名護博物館の脇には推定樹齢およそ300年の立派なフクギ群(沖縄県天然記念物)があるので、このハエ(幼虫はフクギの実を食べる)がいるというわけですね。

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トキンソウトリバ(2021年6月18日 名護博物館)

外階段にとまっていたトキンソウトリバ。SFに出てくる飛行機のような形のガ。なぜそんな形に?

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ヤマトルリジガバチ(2021年6月17日 名護博物館)

ある雨の日。物干し用のロープにぶら下がるヤマトルリジガバチの姿が。
よく見ると脚(あし)を使わず顎(あご)メインでぶら下がっているハチも。

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なかなか奇妙な光景。雑巾が干せないじゃないか・・・!どいてくれ!

このハチも毎年のようにこの時期に中庭から博物館内に侵入してきます。
名前の通り瑠璃色の光沢があってきれいなハチではありますが・・・

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ミドリセイボウ(2021年6月26日 名護博物館内で採集)

ヤマトルリジガバチよりさらにきれいな上の写真のハチ。建物の中に入ってきて死んでいたものを標本にしている最中なのですが、ミドリセイボウという種のようです。このハチ、ヤマトルリジガバチの巣の中に卵を産み付け、寄生するとのこと。

ウーム、納得! 

中庭で見られる生きものの関係性が少しだけわかった気がします。
フタオチョウに感謝ですね。

(NM)