日々のなごはく。

名護博物館ブログ

スズムシソウの一斉開花、桜と共演

少し前に紹介した、6年周期で一斉開花するコダチスズムシソウ(セイタカスズムシソウ)

前回紹介したのは嘉津宇岳でしたが、少し前に、加えて八重岳周辺(本部町)に足を運んだところ、群落の一斉開花がピークを迎えていました。ちょうどカンヒザクラも開花時期を迎えているので、一緒に咲いているところを見ることができました。

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カンヒザクラとコダチスズムシソウ(2022年1月15日 本部町

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コダチスズムシソウの花(2022年1月15日 本部町

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コダチスズムシソウの群落(2022年1月15日 嘉津宇岳・八重岳)

6年に1回しか花を咲かせないという、なんとも不思議なコダチスズムシソウ。

この周期性を調査している研究者の方から、最近詳しくお話を聞く機会がありました。

それによると、種子や差し木で栽培した場合も発芽から6年目に花を咲かせ、気象や栄養の条件とは無関係とのこと。

周期を持って一斉に開花することで、実を食害するガの幼虫の被害を抑えている説、昆虫を介して行われる受粉の効率を高めている説が有力とのことでした。

なお、この周期は場所や個体によってズレもあるようで、一斉開花の年以外にも花は見られます。あくまで全体の傾向として今年が一斉開花の年ということです。

また、台湾や八重山諸島のコダチスズムシソウは毎年開花するようで、周期的な一斉開花は、沖縄島で比較的最近に進化したのではないかと考えられているようです。

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白い花を咲かせるコダチスズムシソウ(2022年1月15日 本部町

本部町では、完全に白い花を咲かせる個体も見られました。
写真だと少しわかりにくいですが、通常の青白い花と一緒に写っているので差がわかるかと思います。

この形質は遺伝するようで、同じ場所で見られるとのこと。

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コダチスズムシソウの実と種子(2022年1月15日 嘉津宇岳)

群落の開花はピークを迎えていますが、場所によっては、すでに花が落ちて実を付け、それも裂けて種子が見えている状態でした。

3~4月が結実のピークらしいので、一斉開花が見られるのもあとわずかの期間でしょう。夏までにはすべて枯れてしまうようです(同時に芽が出る)。

6年に一度しか花が見られないということは、長い人生においても、何回見ることができるでしょうか・・・?
せっかくの機会ですので、見たことがない方は、ぜひ観察してみてはいかがでしょう。

前回紹介した嘉津宇岳登山道や、八重岳休憩所の山手側などでも群落の開花を見ることができます。

 

なお、6年に1回しか実を付けないので、林道脇の草刈りなどがこのタイミングに重なってしまうと、群落に与えるダメージが大きい、というお話もありました。群落が刈られてしまった上、そこに外来植物が侵入してしまい、回復していない場所もあるそうです。

コダチスズムシソウは知名度があるとはとても思えないので、不思議な生態のことも含めて、もっと地域の人たちにも情報を伝えていく必要があるな、と考えさせられるお話でした。このスズムシソウの葉を食べるコノハチョウの方は天然記念物(県指定)でもあり、知名度があるんですけどね。

おまけ

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シラタマカズラの実(2022年1月15日 嘉津宇岳)

嘉津宇岳では、シラタマカズラの白い実とサクラの花が共演していました。
まぁ、実際には、共演というよりは競争という感じでしょうが・・・

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八重岳のカンヒザクラ(2022年1月15日 本部町

八重岳のカンヒザクラは上の写真の頃は満開でしたが、1週間後にはややピークを過ぎている感がありました。

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エゴノキカンヒザクラ(2022年1月24日 本部町

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落花したエゴノキカンヒザクラ(2022年1月24日 本部町

林道脇に生えたコケの上に、カンヒザクラエゴノキの花が。

色合いが素敵です。

(NM)