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名護博物館ブログ

卵からふ化!モクズガニのゾエア幼生

観察中のモクズガニの卵(先週に下の記事で紹介)ですが、昨日からふ化が始まりました!

 

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ふ化したモクズガニのゾエア幼生(2022年2月1日)

一般的に生まれたてのカニの子ども(幼生)は、親とは全くちがう姿形をしています。

卵からふ化した幼生は脱皮をくり返し、ゾエア幼生 ⇒ メガロパ幼生 ⇒ 稚ガニの順で成長します。

サワガニのなかまのように、卵の中で稚ガニまで成長してからふ化する種もいますが、かなりの少数派ですね。

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ふ化したモクズガニのゾエア幼生(2022年2月1日)

白い背景だと、ゾエア幼生の姿形が見えにくいので・・・

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ふ化したモクズガニのゾエア幼生(2022年2月1日)

・・・背景を黒くして撮影してみました。光量を確保するために、横からライトで照らしています。白背景の写真に比べて眼が黄色っぽく写っているのは、このライトが反射しているためです。

カニのゾエア幼生は、種類を問わず、背中から棘(とげ)が1本伸びているのが一般的です。カニというより頭でっかちのエビという感じです。大きな眼もあいまってSF映画などに出てきそうなユニークな形をしていますね。

なお、メガロパ幼生はゾエア幼生よりカニに近い形で、稚ガニになると親とは少し形がちがうものの、外見的には完全にカニになります。

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モクズガニの卵(2022年2月1日)

観察中の卵の塊(かたまり)は個々の発育に差があり、ふ化したのはまだ一部です。
上の写真の右側にふ化した後の卵の殻(から)が写っています。

今までは卵の中の卵黄が栄養だったので、ただ観察するだけで楽ちんでしたが、ふ化した幼生を稚ガニまで育てるとなると、エサ等のことも含めて難易度がぐんと上がります。

成長し、稚ガニに近い発育のステージになるほど、生残率が急激に低下することが知られています*1

ぜひ、メガロパ幼生なども見てみたいところですが・・・!

(NM)

*1:岡本一利・鈴木三夫, 1992. モクズガニの幼生と稚ガニの生残、成長に及ぼす水温、塩分濃度の影響. 静岡県水産試験場研究報告,27: 21-32.