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名護博物館ブログ

「いっぱく展」 〜名護・やんばるを愛した画家・山之端一博の世界〜 に向けて

7月7日、山之端一博(やまのは かずひろ)さんの絵が博物館に搬入されました。「いっぱくさん」こと、山之端一博さんは、名護博物館の初代の協議委員長を務めた方です。

いっぱくさんの父親は、名護市城出身で、沖縄に最初にT型フォードの乗り合い自動車を持ちこんだ山入端隣次郎(やまのは りんじろう)さんです。


T型フォード(写真集 名護―ひとびとの百年. 名護市史編さん委員会編より)

いっぱくさんは、父親の仕事の関係で那覇で育ち、沖縄県立第二中学校に進み、そこで絵を学びました。昭和17年早稲田大学第一高等学院に入学するも、翌年には学徒動員。昭和26年に早稲田大学を卒業し、奈良県の高校で教職につき、昭和52年、54歳のときに名護に帰ってきました。その年、第4回サロン・デ・ボザール展で大賞を受賞しています。


「肥料をまく人」(サロン・デ・ボザール展入賞作)

名護に帰ったいっぱくさんは、辺土名高校で教鞭をとるかたわら、精力的に絵を描き、やんばる絵画同好会の会長を務めるなど名護・やんばるの美術文化活動をリードし、平和運動もまた熱心に行いながら、「デイゴ」「馬」「南の星座」「キジムナー」など数々の印象深い絵を残しました。


「梯梧(デイゴ)と海」

2001年(平成13年)に急逝(78歳)。
2004年には友人らにより「遺作展」が開催され、2009年には「ギャラリーみんたまあ」が回顧展を開催しています。

名護博物館でもいっぱくさんの絵を5点収蔵していますが、このたび、関係者の働きかけにより、いっぱくさんの絵画資料のほとんどが名護市に寄贈されることになりました。現在、「ギャラリーみんたまあ」を中心にその整理を行っています。


整理作業の様子

8月19日(金)〜9月4日(日)に、名護博物館ギャラリーと「ギャラリーみんたまあ」を会場に、展示会を開催します。

自然界への畏敬、人間の尊厳、「いっぱくさん」のまなざしは、現在、私たちが抱え続けている問題や課題に向き合う一つの「視座」になるものと信じています。

膨大な資料と作品が織りなす相乗の対比(コントラスト)は、「いっぱくさん」の「人生観や哲学」また、その人物が生きた「時代や背景」を浮かびあがらせることでしょう。

どうぞ、名護・やんばるの多くの人々に愛された「いっぱくさん」の世界をご覧ください。

(ひさし)