先週、大宜味村の津波海岸に埋めていたコマッコウの骨格を掘り出す作業を行いました。
話は、2ヶ月半ほど前にさかのぼります。
あれは、忘れもしないゴールデンウィーク初日の4/27(土)。
一本の電話により、休日を満喫しようとしていた職員の1日は一変したのでありました・・・
「津波海岸に、小型のクジラ死体が打ち上げられている」
この日は、ちょうど化石展(記事はこちら)の化石発掘体験イベントがあった日で、出勤中の職員だけでは手が回りません。
休みだけど運悪く(笑)顔を出していた職員も一緒に現場へむかいます。
現場についてみると、どうやらコマッコウ Kogia breviceps のようです。
写真の色は白っぽいですが、腐って皮がはがれているだけです。
中身が少しはみ出ていますが、カラスのしわざでしょう。
生きているときは、下の写真のような姿です。
少しとぼけた顔をしています。
【コマッコウの模型(名護博物館2階常設展示室)】
さて、測ってみると全長は2.88mでした。
コマッコウは、成長してもこれぐらいの大きさの小さい鯨類です。
名護博物館には、コマッコウの全身骨格標本がありません。
骨格収集のため、肉をとりのぞきます。
ふだんの生活ではかぐことない、新感覚のクサさです!
死体を発見した館長(真ん中)を筆頭に、係長(右)、私(左)が除肉作業を進めます。
クサさに一歩引いているしま氏(左上の足)。
記録係は、唯一出勤日だったTM氏。
私は大学時代からこのような機会に遭遇することも多かったので、比較的慣れていますが、
慣れていないと耐え難いクサさのよう。
しかし、このクサさを乗り越えないとホネが手に入りません!
除肉のついでに消化管の中を見てみたのですが、イカの口器(いわゆるカラストンビ)や魚の骨が出てきました。
左上の丸いのは何かな?と思って知り合いの研究者に聞いてみたら、イカの眼のレンズだそうです。
このコマッコウが生きていたときにどんな所でどんな生きものを食べていたのか、いろいろな想像がふくらみます。
肉を取り除いたら、部位ごとに、農業で使う寒冷紗につつんで、砂浜に埋めます。
写真では、かなり浅く見えますが、それなりに深く掘っています。
・・・といっても、砂浜の幅がせまく、すぐそこは海。
台風がくる前に別の場所へ移動して埋め戻す必要がありました。
そんなわけで、前置きが長くなりましたが、先週埋めた骨の掘り出しを行ったわけです。
炎天下の中、最近腰痛に悩まされている学芸員3名によって作業開始!
張り切るY学芸員(右)。マイペースの私(左)。
撮影 by ひ学芸員。
ハエや微生物の働きによって、骨についていた肉の残りはほとんどなくなっていました。
写真は、並びの順番に気をつけながら、脊椎と肋骨を取り出しているところです。
赤いタマネギ袋に入っている大きなカタマリが頭の骨です。
尾椎(しっぽの方)。尾椎には、下にV字骨と呼ばれる骨がくっついているのでなくさないように気をつけます。
細かい鰭の骨は特に注意が必要です。
写真は、左胸ビレの骨でしっかり5本指ですが、配列は正しくありません・・・
後ほど、しっかり検証する必要があります。
ちなみに右胸ビレは、死体を見つけたときに先が腐って欠けており、掘り出された指の骨もかなり足りませんでした。残念・・・
結局、肉はほとんど残っていなかったので、埋め戻す必要はありませんでした。
ブラシできれいにし、仮保存しています。
掘りだし作業は朝から始め、半日で終わると思っていましたが、骨をきれいにする作業まで入れて、結局夕方までかかってしまいました。
腰痛が悪化した一日でしたが(笑)、完全に近い形で骨格標本が手に入って良かったです。
今後は、骨に染みこんでいる脂抜きの作業を行う必要があります。
(NM)