日々のなごはく。

名護博物館ブログ

企画展の紹介など その1

ただいま開催中の企画展、
「生物の移動展 海山こえろ!生きものたちの大冒険」のようすを少しだけ紹介します!

今回の企画展では、大きめの制作物に力を入れました。


ザトウクジラのヒゲと胸びれの骨
このブログでも、これまでに何度か紹介した、静岡で手に入れたザトウクジラのものです。
(過去の記事⇒ 12
ザトウクジラは、春先に繁殖・子育てのために沖縄へやってきます。
職員と博物館友の会のカズオ先生、先週まで博物館実習にきていた実習生の力作です。

クジラのヒゲは、ヒゲ板が数百枚もならんでいるのですが、実際に見てみないと、どういう構造なのかなかなかイメージできません。
この機会にぜひ、観察してみてください。


ウミガメのはく製
昨年度に作製したばかりのタイマイも展示されています。このタイマイは東江の人工ビーチに打ちあがって友の会のTさんが見つけたものです。
ウミガメの移動の謎を明らかにするため、最近では衛星による追跡調査がさかんに行われているそうです。


オカガニの標本
満月の夜に海に子どもを放すことで有名なオカガニ
動画もありますよ!


オカガニのふ化したばかりの幼生を顕微鏡で見ることができます。
子どもたちに大人気です。


オカガニのふ化幼生
顕微鏡では標本がメインですが、運がよければ生きた幼生も見ることができます(笑)


カツオの一本釣り
これは本物でしょうか?ニセモノでしょうか?答えは会場で!
カツオは黒潮にのって南からやってくる海の幸ですね。


コンジンテナガエビ
日本最大級のテナガエビ。水槽で飼っています。
川の生きものも、ほとんどは海と川を行き来する通し回遊を行います。


ニホンウナギ
最近、絶滅危惧種に指定されたニホンウナギ
ウナギは産卵のために、日本から数千kmもはなれた遠い南の海へ回遊します。
ちなみに、このウナギくんは、2年前の川の企画展でも活躍してくれました。


大型制作物その2、海岸コーナーです。
夏、南から沖縄へやってくるアジサシたちは、海岸の岩場に巣を作ります。
足元の砂浜には、水の流れで運ばれてきた植物の実やゴミが打ちあがっています。
そんな風景をイメージして作りました。


大公開!制作途中の写真。
アジサシがのっかっているところは、発泡スチロールをけずって作ったものです。
色ぬりは、友の会のカズオ先生の指導をうけた実習生が、すべてやってくれました。
大活躍&大助かりでした。


ベニアジサシの部分をアップ。
違和感なく仕上がったと思います。


砂浜の部分の植物の実&ゴミ


この企画展を開催する一つのキッカケになったアカハラダカ・サシバの渡りの展示。
幼鳥ですが、アカハラダカのはく製も今回の企画展に合わせて作製しました。
大きめのスクリーンで、タカの動画を映しています。
名護博物館&友の会は、2008年から毎年、市内上空を南へ渡るアカハラダカのカウント調査を行っています(過去の記事はこちら)。
カウンターも置いてあるので、映像を見てタカのカウントにもぜひ挑戦してみてください!


大型制作物その3、干潟(ひがた)コーナーです。
マングローブの1種、メヒルギが胎生種子(たいせいしゅし)をぶらさげているようすを観察できます。
マングローブは潮が満ちてくると、水につかってしまうような場所に生えています。
胎生種子はやがて落ちて、水の流れで別の場所へ運ばれます。

後ろに写っているのは、冬をこすために沖縄へやってくるダイサギのはく製です。
干潟は、このような冬鳥たちの大事なエサ場です。

じつは、よく見るとシオマネキもいます。


水の流れで運ばれて分布をひろげるタイプの植物は、タネや実が長い時間水に浮いていられるように、空気をふくんだスポンジ状の構造を持っていることが多いです。
左から、アダン、ミフクラギ、モモタマナ(クワディーサー)の実です。
近くの幸地川の河口ちかくで浮いていたのをひろってきましたが、いつまで水に浮いていられるか・・・要注目です。


前に博物館でアイドルをやっていたオリイオオコウモリのコモちゃんも、はく製でカムバックしています。

植物で多く見られるのは、タネが動物によって運ばれるタイプです。
植物は、おいしい果肉をさしだす見返りとして、タネを運んでもらいます。
運ばれた先でフンと一緒にタネが落ち、条件がよければ発芽します。
オオコウモリの場合は、フン以外にもペリットという形で種子を散布します。

オリイオオコウモリのペリット(イヌビワ)
コウモリが口の中で実をよくかんで、汁だけしぼりとった残りカスです。
沖縄に住んでいれば、朝、そうじするときに木の下に落ちているのを見かけることがあると思います。
よく見ると、中にタネがたくさん入っています。

一方、「くっつき虫」として知られる植物のタネ(正確には種子ではない)は、動物にくっついて運んでもらいます。

シンクリノイガ
名前のとおりイガイガ、トゲトゲしていますが、顕微鏡でみると、トゲの一本一本にさらに細かいノコギリ状のトゲがならんでいるのがわかります。くっつくのも納得ですね。この中に、タネが入っています。
シンクリノイガや、その辺にたくさん生えているシロノセンダングサ(サシクサ)は、今ではふつうに見られますが、もともとは外国原産の外来種です。おそらく、こうした植物が分布を広げるのに、人もずいぶんと手助けしたことでしょう。
トゲなどの構造物でくっつくタネのほかには、ネバネバしていてくっつくタイプのタネもあります。


こちらにも顕微鏡を置いているので、ぜひ観察してみてください!

さて、紹介第1弾はこのくらいにしておきます。
今回の企画展の制作物は、試験的にやってみたところもあるのですが、思いのほかうまくいったと思います。
細部については、まだまだ十分ではない部分もありますが。


展示を一通り見たら、ぜひワークシートにもチャレンジを!

(NM)