日々のなごはく。

名護博物館ブログ

博物館資料収集・登録のおはなし PART 1. 自然史―はく製・骨格標本

みなさん、こんにちは。

連休は、前半は雨でしたが、後半は晴れてお出かけ日和でしたね。
(私は、名護・やんばるの川や海の様子をのぞいてきました!)

さて、今日は博物館の資料収集・登録のお話を少ししようと思います。
と、いうのも、以前ご紹介したヘビたち(記事はこちら)の剥製ができあがって、登録の作業を最近行ったからです。

まずは、平成23年度に製作したはく製・骨格標本たちをご紹介します!

※ なお、この記事で紹介するのは、いずれも死体を標本にしたものです。
許可なく野生動物(ほ乳類・鳥類)を捕まえたり、殺したりすることは、『鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律鳥獣保護法)』(詳しくはこちら)の罰則の対象になるのでくれぐれもご注意を!

1. タイワンスジオ(本はく製)

自然なくねりを再現!? 

以前の記事で紹介した大型のヘビ。
特定外来生物です。
元名護市文化課職員の方が読谷村から持ってきてくれました。

2. ガラスヒバァ(本はく製)

こちらも以前紹介したヘビ。
有毒ですが口は小さく、また毒牙が口内の奥の方にあるので、咬まれて大変!!という話はあまり聞きません。
大宜味村立喜如嘉(きじょか)小学校の生徒さんが校内のビオトープで見つけた個体です。

3. アカマタ(本はく製)

沖縄では、身近なヘビの代表選手でしょうか。
名護博物館協議会の岸本さんが、名護の為又(びいまた)から持ちこんでくれました。

4. オオバン(本はく製・全身骨格標本
 

ちょうど今、海洋博の熱帯・亜熱帯都市緑化植物園で「鳥と巣展」(こちら)をやっていますが、そこの職員の方が自宅(本部町)で死んでいるのを発見して届けてくれた個体です。
同じ個体から、はく製と骨格標本の両方を作っています。

5. バンの幼鳥(本はく製)

ジャスコ名護店の近くで死んでいた個体を、名護博物館初代館長の島袋さんが拾って届けてくれました。
当たり前ですが、生きものは成長するとともに姿形もかなり変わります。
このような成長途中の個体を収集することも、とても大事なことです。

6. ヤンバルクイナ(全身骨格標本

博物館の冷凍庫に眠ること十数年・・・ようやく標本になったヤンバルクイナです。
言わずと知れた沖縄を代表する鳥で、国の天然記念物です。
記録によると、1999年にネオパークオキナワ名護自然動植物公園)で飼育していた個体が死亡し、博物館に持ちこまれたようです。
予算は限られていますので、このように冷凍庫で眠り続け、日の目をみない生きものたちもまだまだたくさんいます。

7. アトリ(本はく製)

名護の喜瀬から連絡を受けて、博物館の学芸員が取ってきたものです。
色鮮やかですね!

8. メジロ(本はく製)

おなじみ、名護の『市鳥』ですね。
いつもお世話になっている鳥の先生・嵩原さんが、沖縄市から届けてくれた個体です。
身近な鳥というのは、意外と見落としがちになるようで・・・
博物館にあまり標本がなかったので、今回製作することにしました。

9. ワタセジネズミ(本はく製)

奄美沖縄諸島に分布する固有種で、準絶滅危惧種(沖縄県レッドデータブック)。
沖縄では、「ビーチャー」と呼んだりしますが、同じトガリネズミ科で本種よりよく見かけるジャコウネズミのことを指していることが多い気がします。
ジャコウネズミよりひと回り小さいです。
名護の嘉津宇岳で死体を見つけました。

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さて、このように多くの方の協力をもらって、博物館に自然史資料が集まってきます。
もちろん、職員が採集することもあります。

持ちこまれた動物の死体は、体長などを測り、拾った日時や場所、採集者などの情報とともに台帳に記入します。


(民俗資料の場合は、また別の台帳に記入します)

その後、-20℃の業務用冷凍庫で保管します。
クジラやウミガメなど、海岸に打ちあがった大型動物の死体などは、そのまま砂浜に埋めて骨になるまで待つ場合もあります。

はく製や骨格標本の製作は、業者さんに発注しています。
職員も、動物の死体からはく製用の皮をはいだり、骨を取り出したりする作業は行いますが、最終的に展示用の標本まで仕上げるためには、熟練した技術が必要だからです。
また、プロの業者が製作した標本は、保存の面でも大変優れています。

ところで、今回製作したはく製は、すべて「本はく製」です。これは、展示用に動物が生きていた頃の姿・姿勢を再現して作るはく製のことです。
皮をはいで防腐処理をし、詰め物をして縫い直すだけの「仮はく製」を作る場合もあります。

製作した標本は、教育用として様々な展示会や講座などで使われます。こういった使用用途の場合は見映えの良い「本はく製」の方が有利です。

(最近では、鳥の巣展(こちら)で、このようなはく製たちが大活躍しました!)

一方、学術的に保存する資料としては、「仮はく製」で十分とも言われています。

学術的には、「いつ」、「どこ」で、「誰」が、「何」を収集したかというような情報が大切であり、このような情報が記録された資料をひたすら集めることに意義があります。そして何より「標本」として残すことが大事です。

工場などで作られる量産品と違って、自然のものは一見そっくりに見えても必ず個体差があります。自然を知るためには、そのような差を知らなければならなく、そのために標本が必要になるからです。

必要な情報が記録された標本があれば、後から標本を調べることで様々な調査や研究ができます。
逆に言えば、いつどこで収集した資料かわからなければ、学術的にはほとんど価値がありません。

そのような意味では、「仮はく製」をたくさん作ることも重要となってきます。「本はく製」を作るには時間と労力、お金もかかりますからね(笑)

発注した標本は、完成すると箱の中に固定された状態で届きます。

そして、自然史資料としてナンバーを付けて登録し、温度・湿度などが管理された収蔵庫で保存します。
近年は、パソコン入力によるデータベース化も少しずつ進めています。

現在、登録している自然史資料だけで8,500点ほどですが、未整理、未登録のものを含めると10,000点近くの資料があります。
この中には、今日取り上げたはく製や骨格標本以外にも様々な種類の資料がありますが、それはまた次の機会にお話ししたいと思います。

それでは!

(NM)