日々のなごはく。

名護博物館ブログ

名護市の渓流、まだ見ぬ滝 その他いろいろ

暖かい日々が続いている沖縄ですが、さすがに渓流の水は冷たくなってきました。
年内にあと何回も川へ入れないと思うので、時間を見つけては足を運ぶようにしています。
先日足を運んだ名護市東海岸の川の上流では、これまで知らなかった滝に出会いました。


お目当ては川の最上流にすんでいるハゼだったのですが、そちらは空振り。

最上流は下流から行くのが大変なので、源流域の上を通っている林道からアプローチすることが多いです。
・・・とはいっても、林道から水が流れている沢まで降りるのは一苦労!

やぶをかき分け、いばらに足をとられながら水のある細い沢筋まで降ります。
林道から続く細い支流は水量が少なく、開発等の影響を受けて赤土などが積もっていることもあります。

泥だらけになりながら、水量の多い開けた大きい支流に出たときは、心が洗われるような清清しさがあります。

今回降りてみた大きな支流を上ってみると、ザーザーという水音がだんだん近づいてくるではないですか・・・

・・・そこには、私がこれまで知らなかった美しい滝が!
段差状の滝で、下の段は落差がおよそ5〜6 mといったところでしょうか。

映画のワンシーンにでも出てきそうな神秘的な雰囲気がありました。
今回観察できた魚やエビ・カニ等には特に目新しい発見もなかったのですが、このようなまだ見ぬ滝との出会いにはいつも心躍るものがあります。

滝のまわりでは、渓流でよく見られるリュウキュウツワブキが黄色い花を咲かせ、滝の美しさをさらに引き立てていました。


リュウキュウツワブキ

滝と比べると小さく見えますが、高さは50 cm以上あります。


アリモリソウ

滝の前や沢沿いには、アリモリソウが小さく可憐な白い花を咲かせていました。

滝という大地の造形と亜熱帯の濃い緑、そして色とりどりの野生動植物、これらが織りなす自然の美は、人の手では創り出せない素晴らしさがあると思います。

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ちなみに名護市では落差10 m級かそれ以上の高さの有名な滝が5つほどあります。
5 m級の滝は名もないものが多く、まだ知られていない滝も数多くあると思われます。
あるいは、それらの滝はかつて山仕事に携わっていた古老は知っているものの、地域の記憶からは忘れられつつあるのかもしれません。

ところで、やんばるにある高い滝の上流には、キバラヨシノボリ(琉球列島固有種)やアオバラヨシノボリ(やんばる固有種)が生息していることがあります。
いずれも絶滅が心配されている希少種で、地域によっては開発等によって絶滅してしまった場所もあります。
しかし、上にも書いたとおり、最上流は行くのが大変なところなので、これらの貴重種が今現在どこに生息しているのか、その全容は明らかになっていない部分もあります。

今回はアオバラヨシノボリがいないか調べに行ったのですが、この場所では残念ながら姿を見ることができませんでした。
ちなみに下の写真のようなハゼのなかまです。


アオバラヨシノボリ

アオバラヨシノボリとキバラヨシノボリは、海へ行くのをやめ、上流で一生を過ごし世代交代を繰り返すようになった種です。

川の魚なのに海へ?と思う方もいるかもしれませんが、沖縄の川で見られる魚やエビ・カニ、貝のほとんどは、一生のうちの最初の頃を海ですごし、それから川へ上ってくる種が多いのです。


クロヨシノボリ

今回足を運んだ場所では、このクロヨシノボリがたくさんいました。
この種はやんばるの川の最上流にいる淡水魚の代表格で、ほとんどの川で見られます。

でもこの魚も川で産卵し、生まれた子はすぐに流されて一度は海へ出る生活を送ります。

クロヨシノボリは川を上る力が強く、滝なども軽々こえて上流まで分布を広げることができる種です。

キバラヨシノボリやアオバラヨシノボリも大昔はこのような生活をしていたのですが、長い年月の間に一生を上流で生活するスタイルに進化しました。
上流という限られた範囲で世代交代を繰り返しているため、その水系独自の遺伝的特徴を持っていることが近年の研究で明らかになりつつあります。

とりあえず、名護博物館に生息している私としては、これら2種の名護市内での分布の現状を解明する一助となる調査活動を続けていきたいと考えています。

なお、上流域は大変危険な場所で経験のない方が気軽に行くと命にかかわります。
今回も経験豊富なメンバー数人で足を運んでいることを念のため書き加えておきます。

・・・・・・・・・・・・・・ おまけ ・・・・・・・・・・・・・・・・

渓流の常連、オキナワオオミズスマシ。
水面をクルクル回りながら泳ぐ姿は眺めていて面白いです。

今回の観察場所にもたくさんいたのですが、水上からは見えない潜水観察ならではの光景を目にしました。


水中の岩盤で静止するオキナワオオミズスマシ

水中で呼吸するための空気の泡がおしりに見えています。
このように水中で静止しているのを何匹か見たのですが、彼らは何をしているのでしょうか?

ついでに、あまり見かけない食事シーンも紹介(こちらは水上からです)。


クルクル〜と回って・・・


キャッチ!

(NM)