先週、ブラジル産の魚類化石の寄贈がありました。
寄贈して頂いたTさんの話によると、市内で落ちているのを見つけたとのことです。
全長40cmほどの魚類の化石で、これで1対です。
化石がノジュールと呼ばれる塊の中に入っていて、2つにパカッと割れた(割った)状態です。
尾びれの周辺
ブラジルは、このようなノジュール魚類化石の産地としてとても有名です。
ブラジル北東部のアラリペ台地で見られる白亜紀前期末(約1億1,000万年前)の地層、サンタナ層からは、保存状態のよいノジュールの魚類化石が大量に産出することが知られています。
産地の次に、この化石が一体何の魚なのか知りたいところですが・・・
正確に種を判定するためには、化石をクリーニングして頭の中の骨の形などを見る必要があるようです。
残念ながら、当館には古生物学を専門にしている学芸員はおらず、それを行うための技術も器材等も持ち合わせていません。
そのため、断定はできないのですが・・・
鰭(ひれ)の形や相対的な位置関係、脊椎骨の数、体形などの特徴から、この魚は、おそらくBrannerion (ブランネリオン属)だと思われます。
では、どうしてブラジルの化石が市内に転がっていたのか・・・
これは全くわかりません。
ただ、ブラジル産の魚類化石は、数十年前は土産品として産地から大量に流通していたこともあり、日本国内でも化石コレクターが個人で持っていることが多いです(こういった個人のコレクションが博物館に寄贈されることも多いようです)。
ブラジルからの輸出が現在は禁止されていることや、拾われた場所の状況からして、この化石はずいぶん昔に捨てられたものだと考えられます。
このようなブラジル産魚類化石は、鑑定依頼のために全国の博物館に持ちこまれるケースも多いようで、古生物学に明るくない素人でもある程度鑑定できるよう、北九州市立自然史・歴史博物館(いのちのたび博物館)が下記の本を出しています。
籔本美孝 (2008) シーラカンス ブラジルの魚類化石と大陸移動の証人たち. 北九州市立自然史・歴史博物館/財団法人福岡文化財団, 東海大学出版会, 神奈川, 82pp.
名護中央図書館の蔵書に入っていたため、私もすぐに読むことができて大変助かりました。
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さて、週末に博物館にきた子どもたちに、この化石を見せたところ、目を輝かせて喜んでいました。
1億年前のものが目の前にあるということ、そこに感動があり、ロマンがありますね。
今後の博物館の展示・教育普及活動にうまく活かしたいと思います。
(NM)