日々のなごはく。

名護博物館ブログ

リュウキュウアカガエルの産卵地にハリガネムシ

今年もあとわずかとなりましたが、自然界に年末年始はないわけで・・・
名護市内の川の源流では、リュウキュウアカガエルが産卵のシーズンを迎えています。

しかし、冒頭で紹介するのはカエルではなく、ハリガネムシです!

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ハリガネムシ(2021年12月11日 名護市内)

毎年観察しているカエルの産卵地である源流域の水たまりにいました。

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ハリガネムシ(2021年12月11日 名護市内)

長さは35.3cm。ウネウネとゆっくり動きます。

私は今年で沖縄生活が13年目になりますが、ハリガネムシをフィールドで見たのはこれが初めてです。

いつも夜間に来ている場所ではありますが、今回はたまたま星を観察した帰りの明け方に寄ったので、時間的なタイミングが良かったのかもしれないですね。

なお、10年ほど前に、市民の方が見つけたハリガネムシを当館に持ってきて下さったことがありますが、それを含めても、沖縄でハリガネムシを見るのは2回目です。

ハリガネムシとは?

知らない方もいるかもしれませんので、ハリガネムシについて簡単に説明を。
一言でいえば、昆虫を宿主とする寄生虫で、日本では十数種が確認されているようです。

カマキリやカマドウマなどに寄生し、おなかの中で成長しますが、産卵は水中で行うため、宿主を操り、水辺まで移動させて水中に飛びこませることがよく知られています。

宿主の昆虫が水の中に飛びこむと、おなかの中からこの針金のような成虫が出てくるのです・・・

そして水中で産卵、ふ化した幼生が、まずはカゲロウなどの水生昆虫の幼虫(中間宿主)に食べられます。この水生昆虫が羽化して成虫になり、これを陸上の昆虫(終宿主:カマキリなど)が食べて、さらに寄生するという生活のサイクルです。

本州では、このハリガネムシに操られて川に落ちるカマドウマが、渓流魚の重要なエサ資源になっている、ということが10年ほど前に明らかにされ、寄生虫が陸と川をつなぐ生態系の中で重要な役割を果たす例として、大きな注目を集めました。

沖縄のハリガネムシは果たして?

今回ハリガネムシを見つけた場所は、源流域の水たまりのような場所であり、落ちた昆虫を捕食するような大きな魚は生息していません。エビ・カニなども、ほとんどいません(強いて挙げるなら、アラモトサワガニ、モクズガニがいます)。

寄生されていた昆虫が何かはわかりませんが、もしかすると、ハリガネムシが脱出した後に無事に水から出て陸に生還したかもしれないですね。

・・・もしくは、産卵のために集まってきたカエルに食べられたとか。

沖縄の川には本州のようなサケ科の渓流魚はいないので、ハリガネムシが生態系の中でどのような役割を果たすのか大変興味深いです。

リュウキュウアカガエルの産卵状況

ハリガネムシのついでのようになってしまいましたが、本来の目的は、リュウキュウアカガエルの今年の産卵の状況を観察することでした。

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リュウキュウアカガエルの卵(2021年12月11日 名護市内)

産卵して3日ほどと思われる卵がありました。

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リュウキュウアカガエルの幼生(2021年12月11日 名護市内)

また、卵からふ化して10日以上と思われる幼生(オタマジャクシ)もたくさんいました。11月中には産卵を開始したようです。

この日は気温が低く、成体は一匹も見られなかったのですが、今年も順調に産卵しているようです。よかったよかった。

オマケ 今年のイタジイのドングリ

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イタジイのドングリ(2021年12月11日 名護市内)

数年前の豊作期には、川筋にもたくさんイタジイ(オキナワジイ)のドングリが落ちていましたが、今年はほとんど落ちていませんでした。

ただ、林道の脇に生えているイタジイの下には、上の写真のようにドングリがたくさん落ちていました。今年のドングリの実り具合には個体差があるようですね。

(NM)