最近、名護博物館庭や周辺で、「チャッ、チャッ・・・」と鳴く小鳥をよく見かけます。
(2014.12.3 幸地川沿い、アパヌクのガジュマルで撮影)
ウグイス Cettia diphone です。
ウグイスと言えば、「ホーホケキョ」と鳴くことはあまりにも有名ですが、これは繁殖期のオスのさえずり。
冬は、「チャッ、チャッ・・・」という声を聞く機会が多くなりますが、「ホーホケキョ」に比べるとあまりにも地味・・・。
鳥好きでない方には、ほとんど知られていないかもしれません。
ところで、ウグイスは警戒心が強く、やぶの中にいるため、姿を見るのはムズカシイとよく言われます。
確かに、「ホーホケキョ」と鳴いているウグイスを探しても、なかなかその姿は見つかりません。
嘉津宇岳でタカの渡り調査をしていた9〜10月には、「ホーホケキョ」の声を何度か聞きましたが、姿を見ることはできませんでした。
ところが、冬に「チャッ、チャッ・・・」と鳴くウグイスは、いとも簡単にその姿を見ることができます。
ウグイスには、いくつかの亜種が知られていますが、沖縄には長い間、亜種リュウキュウウグイスのみがすんでいると信じられてきました。
ところが、1970〜90年代に名護市の多野岳周辺で行われた調査で、色の違う2タイプがいることがわかったそうです*1。
その内容を簡単にまとめると、
● 沖縄島には、実は体の色が異なる褐色型と灰緑色型の2タイプがいることがわかり、灰緑色型は冬(11〜3月)に越冬のためにやってくるウグイスだった。
● 灰緑色型は、今までリュウキュウウグイスとされてきたウグイスらしい。
● 年中沖縄島にいる褐色型のウグイスは、大東島で約80年前に絶滅したと考えられていた亜種ダイトウウグイスで、今まで沖縄島にいるということが見落とされてきた。
といった感じです。
そんなわけで、最近よく見かけるウグイスは、北から冬を越すために渡ってきた灰緑色型のウグイスと思われます。
色の特徴もピッタリです。
このウグイスは、本州より北で繁殖する亜種ウグイスか亜種カラフトウグイスだと考えられているようです。
一方、繁殖期に「ホーホケキョ」と鳴いているウグイスは、灰緑色型が冬にしかいないという点からダイトウウグイスということになるのでしょうか。
冬に人里で姿をよく見かけるのは、灰緑色型の特性でしょうか?それとも個体数が褐色型より多いためによく見かけるだけでしょうか?
それは、わかりませんが・・・
過去2年の名護博物館の自然史資料受入台帳を見直してみると、博物館周辺で死体で見つかったウグイスが2件あり、どちらも11月で灰緑色型でした。姿をよく見かける=人と鳥の生活圏が重なっている、ということですので、それを反映した結果と言えそうです。
さて、博物館周辺で冬によく見かける鳥といったら、まずシロハラ Turdus pallidus が思い浮かびます。
この鳥も越冬のために北からやってくる冬鳥です。
つい数日前も、屋部支所で窓ガラスに衝突して死んだシロハラが博物館に持ちこまれました。
(シロハラのオス 2014.12.5 受け入れ)
シロハラは、冬に名護博物館に持ちこまれる鳥の代表格で、記録しているものだけでも過去6年で9件あり、それらはすべて11〜3月の間でした。
そのほとんどが、窓ガラスに衝突して死んだと思われます。
冬をこすために北からはるばるやってきた果てに、ガラス衝突死が待っていると思うと、気の毒です。
鳥のガラス衝突を防止するためには、バードセーバーが効果があるとされています。
大型のタカなどの形をした窓ガラスに貼るステッカーのようなものです。
市販されていますが、自作することもできます。
あの窓ガラスはよく鳥がぶつかるなぁ・・・そんな心当たりがある方は、ぜひ試してみてはいかがでしょうか。
(NM)