日々のなごはく。

名護博物館ブログ

ひんぷんガジュマルが見下ろす川の中には・・・

どんな生きものがいるでしょうか?
・・・というわけで、久しぶりに幸地川の中に入って生きものを観察しました。
幸地川は、名護博物館から歩いて数分、国指定天然記念物の「ひんぷんガジュマル」の脇を流れている川です。
このあたりは、潮の満ち引きで海水と淡水がまじる汽水域(感潮域)です。

ときどき、黒いスーツの怪しい人物が水中を漂っているのが橋の上から見えるかもしれませんが、そんなときは声をかけてもらえたらと思います。
・・・じっくり観察してもらってもいいですが(笑)

さて、色々な生きものが見られたので、その一部を紹介します!


テングヨウジ Microphis brachyurus
流れに身をまかせてユラユラ泳いでいました。

クロホシマンジュウダイ Scatophagus argus の幼魚
5cmくらい。赤い模様がきれいです。


クロホシマンジュウダイ+スミゾメスズメダイ幼魚
15cmほどに育ったクロホシマンジュウダイもいました(左上)。


スミゾメスズメダイ Pomacentrus taeniometopon の幼魚
汽水域にたくさんすんでいるスズメダイで、成魚は真っ黒ですが、子どもは青や橙の模様がありきれいです。


リボンスズメダイ Neopomacentrus taeniurus
この場所では多くありませんが、もっと河口に近い場所では、川の上からも護岸に沿って群れているのが見えると思います。
スミゾメスズメダイと同じ場所でよく見られます。


ゴマフエダイ Lutjanus argentimaculatus の幼魚
5cmくらい。幼魚は赤い鰭(ひれ)と体の縞が目立つので、橋の上からも比較的簡単に見つけられます。


ゴマフエダイ Lutjanus argentimaculatus
こちらは、20cm以上に育ったゴマフエダイ
沖縄ではカースビと呼ばれ、食用にもなります。
後ろは、30cmオーバーのカワスズメ(モザンビークティラピア)。
ほとんどの川に定着してしまっている外来魚で、幸地川でも見られますが、数はそれほど多くはありません。
他の大型の魚もたくさん見られるので、生態系がまだ健全に保たれているからでは・・・と考えています。


クロホシフエダイ Lutjanus russellii の幼魚
こちらも食用になる魚。沖縄名はヤマトビー。
幼魚は体側に4本の縞があります。
この写真は、少しモヤっとしていますが、密度(水温と塩分できまる)のちがう水がまじるときに、このモヤモヤが発生します。
上流から流れてきた冷たい淡水と、海から入りこんでくる暖かい海水が混じった状態です。


クロコショウダイ Plectorhinchus gibbosus の幼魚
沖縄名シバチャシチュー。この幼魚は10cmくらい。
フエダイのなかまや、このクロコショウダイなど、子どもの頃は川の河口近くで生活して、成長すると海へ出ていく魚はたくさんいます。


オキナワフグ Chelonodon patoca の幼魚
5〜6cmほど。このフグも、夏〜秋にかけて汽水域で幼魚が見られます。
初夏に見られる幼魚は2cmくらいです。


オキナワフグ Chelonodon patoca の幼魚
別のオキナワフグ。グッドタイミングで落ちてきたミミズをついばんでいました。
かなりの数がいたので、橋の上からも探すのは簡単でしょう。


ヒメツバメウオ Monodactylus argenteus の幼魚
素早く泳ぎ回るので、写真に撮るのがなかなかむずかしい魚です。
もともと八重山諸島の方に多い魚ですが、最近沖縄本島でも目撃例が増えているとか。
これは他の南方系の種にも言えることで、はたして地球温暖化のせいなのか・・・



ナンヨウタカサゴイシモチ Ambassis interrupta
6cmほど。これも主に八重山諸島で見られる種です。
この場所では初めてみました。


オオクチユゴイ Kuhlia rupestris 、 ユゴイ Kuhlia marginata の群れ
大型の魚の中では一番数が多いのが、このユゴイのなかま。沖縄名はミキユー、ミチューなど。
これまで紹介した生きものと比べると、より上流の淡水域まで見られます。
手前にいるのが、オオクチユゴイ。
「大口」の名のとおり肉食で、水面に落ちてきた虫などをかすめ取るようにして食べます。
現在、博物館でも飼育していますが、自分の体の半分くらいのエサでも食いつくくらい、食い意地がはっています。
30cm以上に育つ魚ですが、ここ数年の幸地川は、それぐらいの大きさの魚も身を潜められる深い場所が少なくなってきています。
特にこの場所では、6年ほど前に水難防止のために捨石を沈めてからどんどん土砂がたまって浅くなっています。


チチブモドキ Eleotris acanthopoma の幼魚
泳ぎ回る魚ばかり紹介しましたが、川底の石の下などにもたくさん生きものが見られます。


アマミイシモチ Fibramia amboinensis の群れ
6cmほど。汽水域の物陰でよく群れている魚です。
卵を口の中で守る習性があります。

この写真にも写っていますが、ポイ捨てされたゴミが多いのが気になりました。

いかがでしたでしょうか?
ふだん生活している街中を流れる川の中、歩いている橋の下には、ここでは紹介しきれないくらい色々な生きものがくらしています。
身近にこれだけの自然があるのは、とても恵まれていることです。
それだけに、ゴミが多いと悲しい気分になります。

街中の自然、ぜひ見落とさずに目をむけてもらえたらと思います。
橋の上からも、色々な魚が見えますよ!


あなだ橋(ひんぷんガジュマル脇)から見た幸地川

(NM)

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