日々のなごはく。

名護博物館ブログ

名護市街地でリュウキュウヤマガメが保護されました!

先日、名護市内で国指定天然記念物リュウキュウヤマガメが保護されて博物館に持ちこまれました。
リュウキュウヤマガメは、世界でも沖縄島北部(やんばる)と久米島渡嘉敷島にしかすんでいない貴重種で、絶滅危惧IB類(2005年度版 沖縄県レッドデータブック)に指定されています。


保護されたリュウキュウヤマガメ(オス)
今回保護された場所は、大南とのことです。
Googleマップで航空写真を見るとわかりますが、大南周辺は市街地が広がっており、わすかな緑地が点在しているだけです。
こんなところでリュウキュウヤマガメが生き残れるのだろうかと疑問に思えてくるのですが・・・

これまでにも、市街地周辺から同じようにリュウキュウヤマガメが見つかっていて、過去の記事(こちら)でも紹介したことがあります。

注意が必要なのは、リュウキュウヤマガメ沖縄本島中南部からも発見されることがあり、これは自然分布ではなく、やんばるから人の手によって違法に持ち運ばれて野外に放されたものと考えられている点です。名護市における確認例も同じ理由である可能性はありますが、しかしそこは自然分布であってほしいですね!

私が当館に来てから知っている範囲では、これまで市内で保護されて博物館に持ちこまれた例は、2010年に1回、2011年に2回、2012年に2回あります。さらに博物館友の会のSさんが2014年に親川で生体を撮影しているので、それを加えると、2010〜2014年の間に市内から6件の確認例があることになります。今回は2年ぶり、7件目の確認となります。

いい機会なので、これらのリュウキュウヤマガメが確認された時の記録を見直してみました。
まず気づいたのは、確認されたのはすべて降水のあった日で湿度が高かった点です。
雨が降ればカメは活発的になるでしょうから、これは当然のことと言えます。

次に確認された月は3、4、5、9、12月で、今回の例を含めて12月が3回あり、他は1回ずつです。
12月が多いのはなかなか興味深いです。

さらに興味深いのは、今回含め性別が確認できた6件すべてがオスだった点です。
これは偶然なのか、それとも雌雄の性比や生態的な違いを反映したものなのか・・・好奇心がそそられます。



さて、保護されたリュウキュウヤマガメは、その日のうちに発見された場所の近くの森林へ返したのですが、周りを市街地で囲まれているので、また雨の日に道路などに出てきて交通事故等にあわないかが心配です。

一般的には、本種の生息を脅かす要因として、人による生息環境の改変やそれに伴う森の分断・乾燥化が指摘されています。また、マングースによる捕食の脅威も大きく、マングースの数が多い名護市以南での本種の確認例は少ないとされています*1
今回本種が保護された場所は、まさにこのような脅威にさらされています。

昔を知る人によると、今回保護された場所周辺では、1970年代にはリュウキュウヤマガメがたくさん生息していたそうです。
しかし現在、市街地周辺はもちろん、市内全域を見渡してもリュウキュウヤマガメに出会う機会は滅多にありません。
リュウキュウヤマガメだけでなく、ハブを始めとするヘビやトカゲ類も市内で姿を消しつつあります(一方で外来種のタイワンハブは増えています)。
40年ほど前までは、名護市にもイシカワガエルやナミエガエル、ホルストガエルといった沖縄県天然記念物に指定されているやんばる固有の渓流性カエルがいましたが、今はその姿を見ることができません。

リュウキュウヤマガメが彼らの後を追うことにならないか心配です。

最後に、リュウキュウヤマガメは天然記念物ですので、採集したり、手でふれることは文化財保護法で禁じられています
野外でリュウキュウヤマガメを見つけて、リュウキュウヤマガメとわかっていながらその場から持ち去る行為は明らかに違法行為ですので、くれぐれも気をつけましょう。違反すると罰則もあります。

今回のように博物館に持ちこまれるケースは、保護されたカメがどんな種類か発見者がわからない場合に限られます。
持ちこまれるカメのほとんどは、外来種のカメです(沖縄本島陸水域で見られるカメはリュウキュウヤマガメ以外すべて外来種)。
現地で確認されたのがリュウキュウヤマガメであることが事前の電話などでわかった場合は、その場から持ち去らないようにお願いしています。

もし名護市内でリュウキュウヤマガメを見つけた場合は、その場でそっと見守ってあげるようお願いします。
そのまま放っておくと生命の危機にさらされるような状況だったり、カメの種類がわからない場合は、まずは市内天然記念物担当課である文化課か、当館までご連絡ください。

・名護市教育委員会文化課文化財係 0980-53-3012
・名護博物館 0980-53-1342

リュウキュウヤマガメは特徴的なカメですので、口頭で特徴を伝えてもらえれば本種かどうか電話のやり取りだけでも十分判断できます。

また、沖縄県内の天然記念物や野生生物に関することでしたら、以下の機関へ連絡してもアドバイスをくれると思います。

沖縄県教育庁文化財課 098-866-2731 
沖縄県環境部自然保護課 098-866-2333 
環境省 やんばる野生生物保護センター 0980-50-1025 

なお、写真が撮れるようでしたら、撮影して日時、場所とともに当館まで情報提供して頂けると大変助かります。
そのような情報は、記録として大変重要です(発見日時と発見場所の情報は必須です)。
よろしくお願いします。

(NM)

*1:当山昌直, 2005. リュウキュウヤマガメ. 沖縄県文化環境部自然保護課, pp. 100-101. 改訂・ 沖縄県の絶滅のおそれのある野生生物(動物編)−レッドデータおきなわ−, 沖縄県文化環境部自然保護課.