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名護博物館ブログ

名護湾に漂着したクサビフグ

新聞(琉球新報沖縄タイムス)でも報道されましたが、先月、名護中央公民館裏の砂浜で中学生がマンボウのなかま、クサビフグを見つけ、公民館を通して名護博物館に連絡がありました。

名護湾に漂着したクサビフグ Ranzania laevis
(黒いバーは10cm)
クサビフグの漂着場所(Googleマップ)
2月15日のお昼頃、「マンボウのような魚が打ちあがった」という連絡を受け、半信半疑で現場へ向かいましたが・・・

本当にマンボウ、しかもクサビフグだったのでビックリ!

私が着いたときには死んでいましたが、子どもたちが見つけたときには生きていたらしく、とても新鮮な状態でした。

クサビフグは、世界中の温帯・熱帯の外洋表層に生息するマンボウのなかまで、国内では琉球列島以南に分布するとされています。
県内では、まれに定置網で混獲されたり、海岸に漂着することがあるようです。
また、カジキやマグロのおなかの中から、食べられた幼魚が出てくることもあるそうです。

ちなみに、幼魚はマンボウを細長くしたような、まさに「くさび」のような体型をしています。
今回漂着した個体は全長57.3cm、体重6.2kg。
クサビフグは全長30cmほどで成熟するようなので、サイズ的に十分成魚のよう。


目のまわりには、とてもきれいなシマ模様。


マンボウのなかまに特徴的な舵鰭(かじひれ:背鰭としり鰭の一部が変形したもの)のまわり。
死んだ直後には青みがかったきれいな模様がありました。


ハニワを連想させる丸い口の穴。

クサビフグは、小魚やプランクトン、クラゲなどを食べるそうです。


口の穴のアップ。中にはくちばしのような板状の歯がのぞいていました。

クサビフグは、しばしば暖水塊に乗って群れることが知られています。オーストラリアでは、暖流の影響を受けて数百個体が海岸に漂着した事例もあるようです。
今回漂着した個体も、沖を流れている黒潮の影響を受けて名護湾に迷いこんだのかもしれません。

いずれにしても、漂着したクサビフグを発見する幸運に恵まれることは滅多にありません。
しかも、今回の場所は人もたくさん通る人工ビーチの脇です。
見つけた子たちには、こんな経験は一生に一度あるかないかだよ!運命の出会いだよ!・・・と力説しましたが・・・(笑)

これを機会に身近な海の自然に関心を持ってもらえたら、とてもうれしいですね。

(NM)

【参考文献】
KA Smith, M Hammond & P G Close, 2010. Aggregation and stranding of elongate sunfish (Ranzania laevis) (Pisces:Molidae) (Pennant, 1776) on the southern coast of Western Australia. Journal of the Royal Society of Western Australia, 93: 181-188.