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名護博物館ブログ

「夏だ!子ども探検隊」 第三回 名護市最大の清流、源河川の自然を探そう!

8月の夏休み期間にあわせて、名護市内の自然を探す3回連続講座「夏だ!子ども自然探検隊」を開催しました。
その様子を3回に分けて、少し紹介したいと思います!
(第一回はこちらの記事
(第二回はこちらの記事

● 第三回 名護市最大の清流、源河川の自然を探そう!

3回目は、源河川の本流から支流フクガーを歩いて、川の自然を探す講座でした。


生きものを探す参加者の皆さん

源河川は名護で一番長い川であり、水量が豊かで水も清らかなことで広く知られています。
行楽シーズンは、中南部から川のレジャーを楽しむために多くの人が訪れます。
この日も、川沿いの道路にずらっと車が並んでいました。

源河川の環境やどこにどんな生きものがすんでいるか軽くレクチャーした後、
さっそく生きもの探しを開始!


採集されたシマヨシノボリ(右上)やアマミアメンボ(真ん中)、オキナワコヤマトンボのヤゴ(左下)


大きなミナミテナガエビのオスをゲットした参加者も!
ミナミテナガエビは、流れの緩やかな川岸の草陰や張り出した根の下などにかくれています。


学芸員実習に来ていた実習生も挑戦です!


シマヨシノボリがとれました。
4cmほどのこの小さなハゼは、川の流れの速い瀬にたくさん生息しています。


一通り生きものを観察して、お昼を食べた後に、支流を上って滝を目指します。
(採集した生きものは、後で川に返しました)
緑に囲まれた自然豊な渓流です。


地元の方が一番滝と呼んでいる滝を登り、さらに上流の二番滝まで行ってきました。

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さて、このように素晴らしい自然の源河川ですが、この環境が残っているのは、地元源河区の皆さんが川の自然を残してきたおかげといってよいでしょう。
このブログでも何度も紹介してきましたが(こちらこちら)、源河川は1980年頃に沖縄の川で絶滅してしまったリュウキュウアユの産地として有名だった川です。
リュウキュウアユは源河の人々に親しまれてきた魚であり、旧源河小学校の校章にも描かれています。

アユが絶滅した大きな要因は、1970年代から加速した沖縄の川の汚濁などの環境悪化とされています。
源河川でも河口付近の汚染が進み、アユが姿を消しました。

地元で親しんでいた魚が姿を消したことに胸を痛めた源河の皆さんが、アユを呼び戻すために川の水質改善のための活動を行い、数年かけて清流は取り戻されましたが、しかし間に合いませんでした。すでにアユは絶滅してしまった後だったのです。

一度絶滅した生きものは、どんなに川が回復しても二度と帰ってはきません。
現在、清流を取り戻した源河川ではリュウキュウアユの姿を見ることもできますが、これは沖縄での絶滅後に奄美大島から分けてもらったリュウキュウアユの子孫たちです。
残念ながら自然本来の姿ではありません。


リュウキュウアユ(2015年7月 源河川で撮影)

それでも、過去の教訓を活かし、奄美から来たリュウキュウアユが命をつないでいけるよう、源河川は20年以上ずっと清流を維持し続けてきました。
水質の汚染に敏感なアユがすめる川づくりをすることは、他の川の生物にとってもくらしやすい環境を保全することにもつながります。
この清流が維持されたのは、地元源河区の皆さんや関係者の頑張りのおかげといっても過言ではないでしょう。

ところで、源河川にも他のやんばるの川で見られるような大型ダムの建設が一時期検討されたものの、実現しなかったという話を地元の方に聞いたことがあります。
もし、このようなダムができていたら、その下流の渓流環境は失われ、今現在見られる多くの人がレジャーを楽しむような光景はなかったことでしょう。
ここでも地元の意思決定が重要だったことが想像できます。

行楽シーズンに多くの人でにぎわう源河川
最近、川で遊んだままゴミを放置して帰るような例が見られることもありますが、そのような光景を見ると残念な気持ちでいっぱいになります。

その素晴らしい清流が現在も残っていることに感謝し、地元の方や川にすんでいる生きものたちに配慮して、マナーを守って川遊びをしたいものです。

(NM)