日々のなごはく。

名護博物館ブログ

新博物館、屋外展示づくりへの第一歩!

新しい博物館づくりは昨年度に土地の購入や造成工事を終え、今年度からいよいよ建築工事を開始する見込みです。

新博物館の建設予定地は、今の名護博物館から車で5分圏内の市街地にあります。この場所は沖縄県の森林資源研究センターがあった場所であり、街中に緑が残された数少ない場所のひとつです。

今日は、名護博物館友の会の皆さんの手を借りて、早朝から屋外に生えている外来種の植物などを取り除く作業を行いました。動植物が好きな有志のみなさんが集まってくれました。

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屋外の外来植物等の除去作業(2020年7月 新博物館敷地内)

新博物館の屋外展示とは?

記事名にある「屋外展示づくり」について・・・新博物館では建物の中にある展示だけでなく、屋外の自然や環境そのものを見てもらうための屋外展示を行う計画となっております。

また、この屋外展示では「名護・やんばる」で私たちのくらしの身近にある自然環境を再現することを目指しており、名護博物館の伝統的理念である「ぶりでぃ(みんなの手)」に基づいて市民や関係者の皆さんと協力しながら展示づくりをしていけたらと考えております。

昔ながらのくらしで使われてきた民具、糸、染料等の材料となる植物もこの環境の中で育てていく予定です。

活動テーマに沿う屋外展示づくり

上で挙げた屋外展示を行うには、今敷地に残されている緑地は正にうってつけ!

・・・なのですが!

一方で、近年様々な場所で問題となっている地域の生態系を破壊する侵略的外来種をはじめ、博物館の活動テーマにそぐわない観葉植物(外来種)も敷地内のあちこちに生えています。

こうした外来種の侵入は、園芸活動に伴う土の移動や人や動物、モノの移動によって意図してなくても起こってしまうところがやっかいです。

屋外展示づくりの第一歩として、まずこのような外来種等を取り除くことが必要であるため、友の会など市民の皆さんの手を借りて月1回の定期作業を行うことになりました。

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取り除いたアメリカハマグルマ(2020年7月 新博物館敷地内)

手始めに、敷地内に多数はびこっているアメリカハマグルマを重点的に取り除きました。キク科の植物で花はきれいなのですが・・・その繁殖力はすさまじく、名護市においてもすでに手の施しようがないほど分布を拡げており、あちこちで見られます。

生態系被害が大きいことから、積極的に防除を行う必要がある種として、環境省が「緊急対策外来種」に指定しています。

詳しくは、環境省が下記資料を公表していますので、そちらをご覧ください。

緊急対策外来種 アメリカハマグルマ チラシ [PDF 5MB]

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取り除いたアメリカハマグルマ(2020年7月)

今日は、45リットル5袋分を取り除きました。アメリカハマグルマは再生力が高いため、取り除いた根をその辺に放置しておくと他の場所に被害が飛び火する可能性もあります。

そのため、袋に入れてすぐに焼却処分!

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ホシアザミ(2020年7月 新博物館敷地内)

敷地内には、上の写真のホシアザミもあちこちに生えています。
これもきれいな花ですが、樹液に毒があり目などに入ると危険です。

素手でさわらないように取り除きました。

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リュウキュウバライチゴ(2020年7月 新博物館敷地内)

外来種等を取り除く一方、上の写真のリュウキュウバライチゴなどは刈らないように注意しながら作業を進めました。

春になったらおいしいイチュビ(野イチゴ)を付けてくれることでしょう! 

観察された動物について

外来植物等を取り除くかたわら、敷地内で見られる動物についても、目を向けたり耳を傾けたりして探してみました。

敷地内のちょっとした水たまりには、トンボやカエルなどがたくさん見られました。

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ギンヤンマのなかま(左)とウスバキトンボ(右)のヤゴ(2020年7月 新博物館敷地内)

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リュウキュウベニイトトンボの雌雄(2020年7月 新博物館敷地内)

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リュウキュウベニイトトンボのヤゴ(2020年7月 新博物館敷地内)

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ヒメイトトンボ(2020年7月 新博物館敷地内)

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ヌマガエル(2020年7月 新博物館敷地内)

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ヒメアマガエルの幼生(2020年7月 新博物館敷地内)

名護岳が近く、敷地前に屋部川水系の水路が流れていることから、ちょっとした水場でも自然と周辺から生きものが集まってきます。

新館の敷地では、緑地と併せて水田の周辺で見られるような湿地環境をビオトープとして再現しようと考えていますが、今の一時的な環境でも様々な生きものがいますので、将来的に多くの生きものが見られるのではないかと期待しています。

・・・が!

植物と同じく、こちらにもやっかいな外来種が入り込んでいるので、敷地内の除去を進めていく必要があります。

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特定外来生物のシロアゴガエル幼生(2020年7月 新博物館敷地内)

 外来生物法で特定外来生物に指定されているシロアゴガエルの幼生がたくさんいました。許可なく生きたまま持ち運ぶことが禁止されている種です。

新博物館敷地周辺の市街地にもたくさん生息しているので、見つけても捕まえたりしないよう注意が必要です。

このカエルの幼生は目がはなれて横についており、鼻先に白い点があるのが特徴です。
似ているカエルの幼生に上で紹介したヒメアマガエルがいますが、体に透明感があるのですぐに見分けられます。シロアゴガエルの幼生には透明感がなく、全体的に茶色〜黒っぽい色をしています。

また、卵はこぶし大ほどの白い泡につつまれています。市街地においてわずかでも水場があり、その水際に泡のボールがあったら、それはこのカエルの卵の可能性大です。

見つけた場合、取り除いて水場から少し離れた場所に置いておくといずれ渇いて死んでしまうので、効率的に駆除できます。

ただし、持ち運ぶことは法で禁止されていますので、あくまでその場で少し動かすだけです。

 

なお、今日の作業では幸い見つかりませんでしたが、特定外来生物のタイワンハブも敷地内や周辺で見つかっています。こちらは説明するまでもなく有毒で危険ですので、市の関係部署に協力してもらい専門器具を使った駆除作業が続けられています。

これからの活動

さて、今回は第1回目の作業でしたが、外来種等を完全に取り除くには地道な作業を繰り返し行うことが必要です。また、取り除いた後に再侵入しないよう、関係者も意識的に気をつけて活動を展開していく必要があります。

また、一通り外来種等の取り除き作業が落ち着いた後は、屋外展示の内容や利用方法に合わせたゾーニングを検討し、それに合わせた植樹や環境づくりをしていく必要があると考えています。

協力関係にある関係者間でこのような情報を共有し、共通の認識を深めつつ、屋外展示づくりを楽しみながら続けていきたいですね。

また、現状ではまだまだ限定的ですが、今後は協力の輪もさらに広げていきたいころです。

(NM)