日々のなごはく。

名護博物館ブログ

新博物館敷地に珍魚タウナギ ほか

新博物館の建設準備が着々と進んでいます。
順調にいけば、今年中には建設工事に着工できる予定です。

さて、新館敷地は街中にありながらまとまった緑地が残されており、新館活動ではこの緑地を生かした活動を展開する予定であると本ブログ内でも紹介してきました。

私は定期的に新館予定地に足を運び、どのような生きものが生息しているのかを観察・記録しています。この記録は新館オープン後の屋外活動の基礎資料として役立つでしょう。

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タウナギ(2020年9月11日夜 新博物館予定地)

2度の台風が通過して数日経った夜(9月)、新館予定地を訪れると、敷地内の水たまり(もともと側溝があった場所)にタウナギを発見しました沖縄県レッドデータブック第3版で絶滅危惧ⅠA類に指定されています。

昨年敷地内で死体を見つけたことがあり、生息しているとは思っていましたが、直接姿を確認することでより確かな記録となりました。

(なお、一緒に写っているオタマジャクシはヒメアマガエルの幼生です)

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確認されたタウナギの顔(2020年9月12日夜 新博物館予定地)

以前に本ブログでも紹介したことがありますが、琉球列島のタウナギは独自の遺伝的特徴を持った固有の集団であることが最近の研究で明らかにされています。 

新館予定地は屋部川水系の水路に隣接しており、この周辺一帯はかつて湿地環境が広がっていたと思われます。

普段は敷地内に水はほとんど流れていないですが、地下水が流れていることから、本種はそのような地下環境に生息していると考えられます。

敷地内の緑地に囲まれた一部分では、湿地環境をビオトープとして再現することを検討しているので、本種の生息環境の保全にもプラスになるよう考えていきたいところです。

・・・・・・・・・・ おまけ ・・・・・・・・・・・

この日は、他にもいろいろな生きものが観察できたので、以下に少しだけ紹介!

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トゲナシヌマエビ(2020年9月12日夜 新博物館予定地)

雨水が薄く流れているような場所では、敷地前を流れる水路(屋部川)から上ってきたトゲナシヌマエビなどを観察することができました。

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敷地内につながる排水溝を上るトゲナシヌマエビ(2020年9月12日夜 名護市大中)

沖縄の川や水田などで見られるエビ、カニなどのほとんどは海から上ってくる生きものたちです

彼らは水の流れがあれば上流へ向かう習性があるため、雨の後などで水の流れができると、水路(川)から排水溝を伝って敷地内にも上ってくるのです。

しかし、現在は敷地内に常時まとまった水があるような環境がないため、彼らが安定的にくらせる環境がありません。新館でビオトープを整備することにより、彼らの姿も常に見られるようになるでしょう

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ウスバキトンボの羽化(2020年9月12日夜 新博物館予定地)

敷地内で一時的にできた水たまりでは、その場所で生まれて無事羽化したトンボたちの姿を目にしました。

上の写真はウスバキトンボ。南から北へ大移動するトンボで、群れで見かけることが多いです。台風接近時によく目撃されることから、沖縄では「カジフチアーケージュ(強風のときに見られるトンボの意味)」などと呼ばれています。

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ヒメトンボの羽化(2020年9月12日夜 新博物館予定地)

ウスバキトンボよりやや小さいヒメトンボの羽化も見られました。
この場所もそうですが、水辺の環境は不安定なものです。
水たまりは、いずれ乾いてなくなってしまいます。

そのような環境が存在しているわずかなチャンスを使って卵から生まれ、羽化して成虫になっていく水生昆虫のたくましさには感心させられます。

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セスジアメンボ(2020年9月12日夜 新博物館予定地)

水たまりの水面では、アメンボが落ち葉につかまって休んでいました。

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よく見ると、落ち葉(アメンボ)の下にはトンボのヤゴもしがみついています。
後で写真を見返して気づきました。

どこにいるかわかるでしょうか?

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ヒメガムシ(2020年9月12日夜 新博物館予定地)

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ウスイロシマゲンゴロウ(2020年9月12日夜 新博物館予定地)

ガムシやゲンロゴウのなかまも見られました。水たまりができると、どこからともなくやってきます。

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リュウキュウカジカガエルのオス(2020年9月12日夜 新博物館予定地)

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ヌマガエル(2020年9月12日夜 新博物館予定地)

カエルもたくさんいます!

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ヤエヤマイシガメ(2020年9月12日夜 新博物館予定地)

沖縄本島では外来種のヤエヤマイシガメ。名護市内でも水田などでよく見かけます。
一方で、本来の生息場所である八重山諸島では、乱獲などにより数が激減しているとのこと・・・

島ごとに特有の生態系が成立している沖縄では、絶滅危惧種が他方では外来種になってしまうような歪な現象がおきています。

やんばるの素晴らしい自然を残していくために、外来種問題は新館でも積極的に発信し、多くの方の理解を得なければならないテーマの一つでしょう。

(NM)