日々のなごはく。

名護博物館ブログ

フタオチョウ観察日記 2021 その3 幼虫の食事

 前回(下の記事)のつづきです。

これまでの観察で、どうやら中庭にいるフタオチョウ幼虫は特定の短い時間帯に食事をしているらしいことがわかってきました。

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食事中のフタオチョウ幼虫(2021年6月10日 名護博物館)

ある日、脚立の上にカメラを設置して幼虫をモニターしてみました。

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休息中のフタオチョウ幼虫(2021年6月9日 名護博物館)

上のgifアニメは、13時から18時頃まで、10分間のインターバルで撮影した写真をつなげたものです。
幼虫がずっと同じ葉の上(糸を吐いて作った座の上)にいることがわかると思います。午前中もこのような感じだったのですが、夜になってからの記録で、ある一コマだけ幼虫が姿を消していました。
写真の中を注意深く探してもどこにも写っていません・・・一体どこへ?

 

・・・幸い、この謎はすぐに解けました。

カメラの設定変更をしているときに、それまでピクリとも動かなかった目の前の幼虫が、急にスルスルと枝を伝って移動し始めたではないですか!

そして移動した先でモリモリ葉を食べ始めました!

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食事中のフタオチョウ幼虫(2021年6月9日 名護博物館)

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食事中のフタオチョウ幼虫(2021年6月9日 名護博物館)

あわてて撮影等を行いましたが、食事はあっという間に終わり、幼虫は元いた場所へUターン。移動し始めてから帰ってきて元の姿勢になるまでわずか15分足らず。

葉を食べていた時間は10分もなかったと思います。

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移動経路

翌日改めて移動した距離を確認してみると、片道が29 cmでした。

その後も、夜の同じ時間帯に複数の幼虫が短時間で近くの枝先に移動し、葉を食べ元の場所へ戻る、という行動が観察されました。

公開されているフタオチョウの生態に関する情報は少なく、あまり探しきれていないのですが・・・昔の論文で、オーストラリアの近縁種が同じような行動をすることが報告されていました。

それによると、この近縁種も食事のために移動している時間(平均15分)より、葉の上の糸座で休息している時間(平均3時間)がはるかに長かったとのこと。*1

フタオチョウの幼虫はその形が特徴的というだけで目を引く存在ですが、生態も調べてみるとおもしろそうですね。

久々にいろいろと論文等を漁ってみたものの・・・上の報告と併せて、他の先行研究論文等もまだ深くは読みこめていないのですが(汗)

幼虫の受難

上で観察していたフタオチョウ幼虫、ある晩ふと見たら、なんとカメムシに襲われている最中ではないですか!
思わず「ヤメロ~!!」と声を出したくなりましたが・・・

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フタオチョウ幼虫を襲うキシモフリクチブトカメムシ幼虫(2021年6月13日)

サシガメのなかまだとばかり思っていたのですが、調べてみると、キシモフリクチブトカメムシ(幼虫)のよう。チョウの幼虫などを襲うそうです。

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死亡したフタオチョウ幼虫(2021年6月15日 名護博物館)

数日後、お亡くなりになったフタオチョウ幼虫の姿が・・・

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蛹化に失敗したフタオチョウ幼虫(2021年6月17日 名護博物館)

さらに数日後、観察を続けていた他の終齢幼虫がいつもの定位置から姿を消したので、周りを探してみたところ・・・頭からぶら下がって死んでいました・・・

サナギになるのに失敗したか、あるいはその途中で何かに襲われたのか・・・
成長を楽しみにしていたんですけどねぇ。

厳しい世界です。

(NM)

 

*1:Tsubaki, Y. and R. L. Kitching, 1986. Central Place Foraging in Larvae of the Charaxine Butterfly, Polyura pyrrhus (L.): A Case Study in a Herbivore. Journal of Ethology, 4:59-68.