名護博物館中庭に生えているヤエヤマネコノチチ。
その葉の上で見つけた沖縄県天然記念物のフタオチョウ Polyura weismanni の卵や幼虫について、これまでの記事で何度か紹介してきました。
6月から7月中旬までの間に、4頭のフタオチョウが羽化したので、その様子を紹介します!
最初の羽化を確認したのは6月17日でしたが、ある朝羽化したチョウに気づく、という感じで、羽化の過程を観察することはできませんでした。
観察を続けていた幼虫が、十分大きくなった後に突然姿を消すので、どこかで蛹(さなぎ)になっているだろうなとは思っていたのですが、見つけきれなかったのです。
羽化したチョウの周辺を探すことで、ようやく他の蛹や、蛹になるために移動してきた幼虫の姿を見つけることができました。
移動してきたフタオチョウ幼虫。逆さになり蛹になる準備を始めたところです。この幼虫はこの後蛹になり、昨日無事に羽化しました(7月16日・一番上の写真)。
こちらはまた別の個体で、蛹になる前の前蛹(ぜんよう)と呼ばれる状態です。
この後脱皮し、蛹になりました。
上の前蛹が蛹になったばかりの頃の写真です。蛹は周辺の色に溶けこんでおり、場所を覚えていても探すのに少し手間取るほど目立たないです。
これまでに5つの蛹を確認し、そのうち3つが羽化しましたが、蛹は大体同じ場所でかたまって見つかりました。幼虫がどのような条件で場所を選んでいるのか、興味深いですね。
同じ蛹の羽化前日の様子です。翅(はね)の模様が浮き出ているのがわかります。
羽化直前(約5分前)の蛹。おなかの節が引っ張られて裂けそうな状態です。前日の写真に比べて白っぽいですが、殻(から)が浮いてきているようです。
そして上の写真のようにパカっと割れ・・・!
この蛹は、7月4日の7時前に羽化が始まりました。
上と同じ蛹を別の角度から。背中が大きく割れています。
チョウが出てきて、蛹の抜殻にぶら下がりました。
ところで、タテハチョウ(フタオチョウなど)やマダラチョウ(オオゴマダラなど)のなかまは脚(あし)が4本のようにも見えますが、よく見ると折りたたまれた前脚を見つけることができます。この脚は物につかまるというよりは、センサーのような役割を果たすそうです。
しかし、4本の脚でよく揺れる抜殻につかまっていられるなぁ・・・と感心します。
羽化開始後10分ほどで見た目にはほとんど翅が伸びきりました。想像していたより速かったです。上の写真は、羽化開始後50分ほどたった頃。
その後、しばらくはぶら下がったまま翅を乾かし、夕方に飛び去ったようです。飛び去る瞬間を見られなかったので「ようです」なのですが・・・
ちなみに、羽化を観察できた3頭のうち、2頭は朝7時前後、1頭は8時過ぎに羽化しました。羽化までにかかった日数は、蛹になってから(蛹を発見してから)それぞれ15、16、17日でした。
羽化したフタオチョウの性別
フタオチョウのオスとメスを姿形や模様で見分けるのはムズカシイようで、チョウ素人の私には判断できませんでした。ただ、サイズがだいぶ違うようで、前翅長がオスは40 mm、メスは50 mm程度で、メスの方が明らかに大きいとのこと。
フタオチョウは天然記念物なので捕まえて長さを測るわけにはいきません。
そこで、蛹の抜殻の長さを測り、羽化時に撮影した写真データから前翅長を測定してみました。
その結果、これまで羽化を観察したチョウはオスが1頭、メスが2頭らしいことがわかりました。
上の写真は、サイズをほぼそろえて並べたものです。蛹の抜殻はどちらも長さ27 mm程度ですが、羽化したチョウは左が明らかに大きくて前翅長が約50 mm、右は約40 mmでした。なので、左がメス、右がオスだと思われます。
羽化の一連の様子
最後に、昨日(7月16日)羽化したばかりのフタオチョウ(メス)の羽化一連の写真を紹介したいと思います。
さて、残る蛹も無事羽化が観察できるでしょうか。
今のところ、寄生虫などにやられた蛹は見ていないですが果たして・・・
羽化したチョウが飛び立つ瞬間もまだ見られていないので、それもぜひ見てみたいですね。
(NM)